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カテゴリ:ニャン騒シャーとミー八犬伝
名は犬村角太郎(いぬむらかくたろう)。 人里離れた山奥の、初春とはいえまだ身も凍える荒滝に身を打たせ、いまひとりの己と向かい合いながら修行の毎日を送っていた。 左胸には紅潮した牡丹の痣が水しぶきの中咲いていた。 彼はある日を境に人が変わったような父親である赤岩一角から折檻を受けるようになり、伯父犬村蟹守(いぬむらかもり)に引き取られ、犬村角太郎と名乗るようになる。 犬村蟹守には一人娘の雛衣(ひなきぬ)がおり、二人は結ばれた。 しかし、雛衣は角太郎の知らぬ間に身籠りそれを知った角太郎は雛衣を離縁して山に引き籠り修行の日々を過ごしていた。 雛衣は身の潔白を訴えたが、如何ともしがたい証拠は疑いようもなかった。 だが後にわかることではあるが、雛衣の腹部が膨らんだのは誤って角太郎の『礼』の珠を飲み込んでしまったためであった。
修行を終えた角太郎は滝から出て着衣を取ろうとしてふとその手を止めた。 そこに一人の猫の若者が立っていたからだ。 「お主は誰だ?」 「おいらかい?おいらは夢曽根雷。シャムの国からきて日本の国を旅している途中、こんな山奥でふとあんたが修行をしているところを見かけ、さっきからずっと見物させてもらってたんだ。」 雷は矢継ぎ早にこう尋ねた。 「あんたのその左胸の痣、牡丹だよね?よかったら名前を聞かせてくれねえかい?もしかするとあんた、おいらが知っているお方たちのお仲間じゃないかと思うんだ。」 角太郎は見も知らぬ、たったいま出会ったばかり者に名乗る筋合いはないとは思ったが、彼の言う事に興味を抱き名乗った。 「私は犬村角太郎と申す。」
二人はたき火を囲み。 雷は今までの事を語った。 もちろん八犬士にまつわる不思議な縁も。 角太郎は雷の言葉に黙って耳を傾けていたがやがて言った。 「私は、そのような珠は持ち合わせておらぬ。」
所変わりここは下野の国。 丶大と犬江親兵衛を探してこの地までやって来た犬飼現八と犬川荘助は一人の霊と語らっていた。 事の経緯はこうだ。 下野の国にやって来た現八と荘助は庚申山で悪事をはたらく妖猫の話を聞き庚申山に分け入り、その妖猫に遭遇した。 現八は妖猫の左目を弓矢で射貫いて退けた。 二人がその夜、庚申山の洞くつで一夜を明かしていると一人の霊が現れ、自分は犬村一角といい、妖猫退治にやって来て食い殺されてしまい、妖猫は犬村一角に化けて、人の世界で生きるようになった。 息子の犬村角太郎は偽犬村一角を父と信じて疑わないので、角太郎に真実を伝えて欲しいという事だった。
現八たちが妖猫の話を聞き、庚申山に赴きここで角太郎の実父である一角の霊に出会うことになったのも何かの縁。 そして、その息子角太郎は八犬士の一人に違いないと二人は角太郎のもとに歩を進めることにした。
所は再び角太郎の暮らす庵に戻る。 雷を伴って角太郎が庵に戻ると、偽一角と後妻の船虫が雛衣を伴って角太郎を待っていた。
偽一角は左目に傷を負っていた。
偽一角は角太郎に雛衣との復縁を申し渡した。
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