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2020.02.20
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箱根の山を越える二つの影があった。

一人は雲を突くような大男。まるで巨木が歩いているようだ。

もう一人は華奢とは言わないが大男と比べれば子供の様に見える男だ。

大男の名は犬田小文吾、もう一人の男は犬塚信乃。

二人は荒芽山五犬士会同で助けてくれた父五里三姉妹と母五里百合たちと分かれて一路相模箱根を目指していた。

山は険しく急こう配で屈強な者でも難儀な場所であった。

 

二人が坂を上ると行く手に何やら旗竿のような物が見えてきた。

どうやら旅芸人の一団のようだった。

近づくとやはり旅芸人であり、聞けばこれから箱根の町で一泊し、諏訪の町まで行き旗揚げをするのだという。

しかし、一団の一人の女性が崖から落ちてきた岩が団員の一人に当たるのをかばって、自らが直撃を受け大怪我をしてしまったのだということだった。

その女性は道の端に横たわり、布団が掛けられていたがまだ若い娘のようだった。

怪我の様子を確かめると小文吾は自分がおぶって町まで連れて行こうと申し出た。

小文吾の体躯と力があれば、そのようなことは造作もないこと。

娘は小文吾の背中に乗せられ、あと二里はある町まで二人は旅芸人たちと同行することになった。

 

「お侍様、かたじけのうございます。」

娘はか細い声で小文吾に詫びた。

「案ずるな。私の背中でゆっくり休んでいればよい。小文吾。私は犬田小文吾と申す。そなたの名は?」

小文吾が問いかけると娘は言った。

「私の名は旦開野(あさけの)、田楽師をしております。」

 

八里の山道を抜け箱根の町に入った一行は同じ宿を取り、小文吾は信乃や数人の旅芸人と町の医者まで旦開野を連れて行った。

小文吾は医者の家の布団に彼女を寝かせたとき、はじめて彼女の顔をはっきり見た。

彼女は美しく、若くまだ少女のように思えた。

医者の見立てでは、岩の直撃で飛ばされたときに腰を打ち、左腕の骨が折れているとのことだった。

医者に彼女の処置をしてもらい処方薬をもらって、夜遅く宿に戻って来た。

 

「犬田様、犬塚様。この度はまことにありがとうございました。おかげさまで旦開野は怪我の手当ても済み、今は静かに眠っております。」

座長の尺兵衛はそう言って深々と頭を下げた。

「いえ、私たちもちょうど箱根に行く途中。お役に立ててよかった。」

小文吾は言った。

「これから諏訪へ参られるのでしょう?旦開野殿はいかがされるおつもりで?」

信乃が訊くと尺兵衛は渋い顔をしてこう言った。

「旦開野は私どもの花形でございまして、この上はここ箱根の町で旗揚げをして旦開野の回復を待つことにしたいと存じます。」

「ところでどちらからお越しになったのですか?」

信乃が訊くと尺兵衛はこんなことを言った。

「私どもは甲斐の国から箱根を抜け諏訪の町へ行くつもりでございました。甲斐の国では猿石村の村長である四六城(よろぎ)様という方に大そうお世話になりました。聞くところによりますと、恩家の浜路という御養女様が病とのこと、私どもは諏訪の国で旗揚げをした際に、きっと薬をお届けするとお約束しましたものを、まことに心苦しゅうございます。」

それを聞いて信乃はつい口走った。

「浜路?」

尺兵衛が驚いて信乃の顔を見ると、信乃は少し照れた顔をして言った。

「申し訳ござらぬ。私の許嫁が浜路といい里へ残しているのでつい思い出してしまいました。」

「そうでございましたか?四六城家の浜路様は、なんと幼いころに鷲にさらわれて来て危ういところを救われたのだとか。付近にある浜路という市場町の名を聞いて笑われたので、これが本名であろうと浜路と名付けられたとのことでございます。」

丶大より伏姫の姪で浜路姫という幼子が鷲にさらわれたという話を聞いていた信乃は驚いた。

「もしやそれは里見家の姫君の浜路姫ではなかろうか?」

信乃はそういうと事の経緯を話した。

 

そこで小文吾は箱根を拠点に八犬士を探し、信乃は分かれて甲斐の国へ向かい浜路という娘を確かめに行くことになった。





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最終更新日  2020.02.20 00:00:28
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