祖 母 の 幻 影
祖母が亡くなったのはいつだったろう。
僕がいくつの時だったろうか
遠い幻影が僕の心によみがえる。
それは悲しい一日だった。
火葬場に行くとき涙がでてどうしょうもなかった。
何年ぶりだろうこんな涙は。
祖母の顔は美しい死顔だった。
菊の花を入れてやった。
その顔は花の香りで埋まった。
小さくなった祖母もその時だけは、大きく
生気がもどったような気がした。
88歳の祖母。幾多の困難にうちかってきた祖母。
私を育ててくれた祖母。
祖母の恩は、生涯忘れようとて忘れえない。
私の心の奥底に深く深くつつまれて眠っている。
忍耐と苦渋の日々、何がほしいともいわず、
ただただ毎日を精一杯生きた人生であった。
苦しくとも辛くとも・・・
何ひとつ苦しいとか辛いとか一言も
こぼさない祖母だった。