ジ ャ ン グ ル 生 活 2 8 年 の 秘 密
シ ュ ロ の 皮 で ” 火 ナ ワ ”
シ カ の 肉 を ベ ー コ ン に
横井さんのジャングル生活は ”生活の知恵” に満ちていた。
それも洗たく機でジャガイモの皮をむいたなどという
ふざけたものではない。
どうしたら人間らしく生きられるかという突きつめたものだ。
生活の知恵を増すごとに、横井さんは生きがいを感じ、だから
孤独の生活にも耐え抜けた。
「 自分の体力からいって、あと30年は生きられたと思う 」ーー
横井さんの自信はそこから生まれた。
住
はじめは懐中電灯のレンズでココナツヤシの繊維( 皮と果肉の間にある )
をほぐしたものに太陽の光で点火、小学校の理科の実験でやるあの方法である。
そのレンズを落として破損したため使用不能。
そこで思いついたのが原始社会と同じ方法。
木にあけた穴に別のかたい棒をこすり合わせて発火させる。
しかし必要のたびにこれをやっていたのでは時間がかかって
たまらない。
雨の日など火がつかないことも多い。
そこで火を保存するために火縄を開発。
火縄はシュロの皮で作った。
それも作るとなると何Ⅰ0メートルもいっぺんに作り、
20センチくらいのボール状にしてある。
とっさに火が必要なときには拾ってきた小銃、機関銃の
火薬をサラの上にこぼし、火縄でボーッと燃え上がらせる
ことも考えついた。
技術革新はさらに進み、ヤシの実から油をとり、火縄を
使って夜の灯火を燃やすことも思いつき、ナベのカケラ
を使ってランプザラを作った。
火が保存できても逃亡者にとって煙を出すことはタブー。
竹であんだカゴに木の皮や繊維をつめ、料理をするカマド
の上に乗せ煙が一度に立ちのぼるのを防いだ。
このカゴは大小二つあり、二つとも煙のすすで真っ黒になっている。
横井さんはこれをオーブンがわりに使い、肉などのくんせいも
作ったという。
食
パンの木の実、ヤシによく似たフェデリコの実などが主食。
フェデリコの木の実は毒性があるが、水につけておいて毒抜きを
してから乾燥し、おろしガネで粉末にし、水でこねて焼いて食べた。
副食は川でとれるエビ、魚、カタツムリ、野ネズミなど、なんでも。
魚をとるために竹でヤナ( 太さ20センチ、長さ70センチ )を
4つ作り、いつもそのうちの3つをナワで作った袋に入れ、川へ
持って行き、別別のところに仕掛けておく。
エサは食べ残したものやココナツの実。
まるで民芸品のように丈夫で、精巧に作られている。
エビのほかウナギもときどきとれた。
ネズミをとるため、針金でネズミ取り器も作った。
しかし、これにかかったのはたったⅠ回だけ。
そのときの野ネズミの肝臓のうまさは
こたえられなかったという。
動物性タンパク質をとるため、落とし穴もつくった。
これも28年間に2度だけ成功。
一度はシカ、もう一度は野ブタ、この野ブタ料理法が
悪くて猛烈な食中毒を起こした。
シカは煙抜きのカゴでベーコンにもした。
水は竹筒で雨水をとるほか近くの川の水をわかして飲んでいた。
衣
洋服に使った繊維は縄なんかと違ってパゴという木の繊維。
これを糸状に切りさいて干しておく。
洋服を作るには布が必要。
そのために木の枝を弓状にしならせて、びっしり横糸を張り、
それにこんどは縦糸を通して織物ができ上るという仕組み。
全部で3着縫い上げたというが、スタイルはそれぞれ
変えてあり、上着のボタンは2つ、3つ、6つと
バラエティーに富んでいる。
上記、記述は、1972年( 昭和47 )Ⅰ月、
新聞に掲載されたものです。
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最終更新日
2022年02月04日 20時18分03秒
[元 日 本 兵 ・ 横 井 庄 一] カテゴリの最新記事
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