丘の上から俯瞰した列車が走り去ったあとの余韻を噛みしめながら、とりあえず終点の駅を目指すことにしました。
しかし、ここ南票はあちらこちらに炭鉱が点在する地であり、ボタを捨てるための線路やトロッコがいたるところで見られます。蒸気機関車ではなく、人力でトロッコを押しているシーンなどに遭遇した日には、思わず「車を停めて」と叫んでいました。
途中で寄り道をしていたものですから、終点の駅に着いたときには、日が大きく西に傾いていました。でも逆に、機関車と客車は艶かしいまでの黄色い光で包まれていたのです。金色に輝く蒸機客車に、この次いつ会えるか分からないと思うと、この一瞬を大切にしたいと思う気持ちが沸々と湧き上がってきます。刻一刻と変わる光の量に、めまいのような陶酔感さえ覚えながらシャッターを切り続けました。そして、日没――。
メンバーの一人がつぶやきました。「この客車に乗ってホテルのある町まで帰りませんか?」。撮影終了後に蒸気機関車が牽く客車に乗って帰る! なんてすばらしい考えなのでしょう。思いもよらない提案に、否や、があろうはずもありません。規則正しいピッチを刻む上遊のドラフト音を聞きながら、薄暮に覆われた車窓を眺めるのは、この上もない贅沢でした。
さて、10日あまりにわたって続けてきた中国SL撮影レポートですが、そろそろ帰国の時刻が近づいてきたようです。明日からはまた違ったテーマで新しいシリーズを始めたいと思います。