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楽天・日記 by はやし浩司

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2007年09月25日
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カテゴリ:育児問題
●壮絶な家庭内暴力(余計なことは、言うな)

 T君は私の教え子だった。両親は共に中学校の教師をしていた。私は7、8年ぶりにそのT
君(中2)のうわさを耳にした。たまたまその隣家の人が、私の生徒の父母だったからだ。いわ
く、「家の中の戸や、ガラスはすべてはずしてあります」「お父さんもお母さんも、廊下を通るとき
は、はって通るのだそうです」「お母さんは、中学校の教師を退職しました」と。私は壮絶な家庭
内暴力を、頭の中に思い浮かべた。

 T君はものわかりのよい「いい子(?)」だった。砂場でスコップを横取りされても、そのまま渡
してしまうような子どもで、やさしく、いつも柔和な笑みを浮かべていた。しかし私はT君の心に、
いつもモヤのような膜がかかっているのが気になっていた。

 よく誤解されるが、幼児教育の世界で「すなおな子ども」というときは、「自分の思っていること
や考えていることを、ストレートに表現できる子ども」をいう。従順で、ものわかりのよい子ども
を、すなおな子どもとは決して言わない。むしろこのタイプの子どもは、心に受けるストレスを内
へ内へとためこんでしまうため、心をゆがめやすい。T君はまさにそんなタイプの子どもだっ
た。

 症状は正反対だが、しかしこの家庭内暴力と同列に置いて考えるのが、「引きこもり」であ
る。家の中に引きこもるという症状に合わせて、夜と昼の逆転現象、無感動、無表情などの症
状が現われてくる。しかし心はいつも緊張状態にあるため、ふとしたきっかけで爆発的に怒っ
たり、暴れたりする。少年期に発症すると、そのまま学校へ行かなくなってしまうことが多い。こ
のタイプの子どもも、やはり外の世界では、信じられないほど「いい子(?)」を演ずる。

 そのT君について、こんな思い出がある。私がT君の心のゆがみを、お母さんに告げようとし
たときのことである。いや、その前に一度、こんなことがあった。私が幼稚園の中にあった自分
の教室で授業をしていると、T君はいつもこっそりと自分の教室を抜け出し、私の教室へ来て、
学習していた。T君の担任が、よく連れ戻しに来た。そこである日、私はT君のお母さんに電話
をした。「私の教室へよこしませんか」と。それに答えてT君のお母さんは猛烈に激怒して、「勝
手に誘わないでほしい。うちにはうちの教育方針というものがあるから」と。しかしT君はそれか
らしばらくして、私の教室へ来るようになった。家でT君が、「行きたい」と、せがんだからだと思
う。私は以後、一年半の間、T君を教えた。

 しかしその「ゆがみ」を告げようとしたとき、お母さんはこう言った。「あんたは、黙ってうちの
息子の勉強だけをみていてくれればいい」と。つまり「余計なことは言うな」と。

 子どもの心のゆがみは、できるだけ早い時期に知り、そして対処するのがよい。しかし現実
にはそれは不可能に近い。指摘する私たちにしても、「もしまちがっていたら……」という戸惑
いがある。「このまま何とかやり過ごそう」という、事なかれ主義も働く。が、何と言っても、親自
身にその自覚がない。知識もない。どの人も、行きつくところまで行って、はじめて気づく。教育
にはどうしても、そんな面がつきまとう。(以上、01年記「子育て雑談」)

(補記)

 このT君は、今でも強く印象に残っている。その後、どうなったかについては、知らない。私はそのT君をとおして、自分の「すなおな子ども論」を、頭の中で完成させた。

 従順で、先生の指示にそのまま従う子どもを、すなおな子どもというのではない。心の状態と、表情が一致している子どもを、すなおな子どもという、と。いやだったら、はっきりと、「いやだ」と言う。それを表情や言葉にして、ストレートに表現できる。そういう子どもを、すなおな子どもという。
(はやし浩司 家庭内暴力 すなおな子ども 素直な子供 すなおな子供)







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最終更新日  2007年09月25日 07時51分30秒
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