まぶしいほどの朝日は、昼間の明かりに変わっていった!
しかし鳥は、森を、ピオーネという紅玉種の葡萄の剥き実のように見ていた。
そこには一切可憐で初々しい愛玩の要素はなかった。
(余白に、百五十円と書く、芽むしり仔うち)
一瞬面映ゆそうな表情らしきものが鳥に浮かんだ。だが、すぐに消えた。
夢の中にいるような深い森の奥に光が射している。土と木の匂いがほのかに漂う。
だが、鳥のさえずりも、風に揺れる葉の擦れる音もない。
(日曜日という本質的に、閉ざされた口が、ひじきに思えてくる。)
地面に降り積もって饐えた腐葉土のまだ幾分かあたらしい落ち葉が、
踏みしだかれる音がした。それは神聖な陥穽のように、やがてまた消えた。
鳥餅のような粘り気をひきながら歩く、足。
悪猿行状。琥珀色のたまゆらの光はもう消えていた。鳥は動いた。
むかでのような、エドガー・アラン・ポーの、虫のようないのち。
(余白に、百五十円と書く、芽むしり仔うち)
壺の中から蜜があふれるように、びくびくと脈打つ、ひくつくような衝動。
かたちよく生い茂る草に横たえられた、踏まれた、乱れの草むらのなかに、
人間の足が見えた。左右へわかたれた秘苑に歪れた夜の来訪者。
浅い眠りの夜、夏の日の影をのこしながらの、その細き道。
暗黒の扉がひらく、冬の夜の硬質な空気が、森のかくされた、
艶めかしいまでの静けさをつたえるように、スカートが下されている。
しかし、いま、影のように寄り添っているのは、時の流れ。
(余白に、百五十円と書く、芽むしり仔うち)
Cupcake×kamome Studio/2015.7.5「漆黒の茂み。(鳥)-(鹿)-(森)の粗製」/5070×3390 写真
原画サイズ/特大サイズ
詩とArt_Works:
塚元寛一さん &KAMOME_STUDIO
画像素材: Cupcake