テーマ:父(10)
カテゴリ:父の麦わら帽子
![]() 何十年ぶりだろう・・・。 龍野市は、その当時とほとんど変わらない。 変わったといえば、その時が止まったような町に、観光客が来ていたことだった。 農業で食べていけなくなった私たち家族が、岡山の田舎から、職を求めて引っ越して来たのは40年以上前。 龍野市は当時は、どこにでもある、普通の田舎町だった。 まわりの町が、大きくなっていく中で、龍野は取り残されたように、ひっそりと息をし続けた。 その、時が止まったような町も、それがゆえに「フーテンの寅さん」にまで出るような魅力を持った町になった。 ![]() 11月に、娘を伴って再度行った。 娘とそんな古い町並を歩いた。 「あっ、麹屋(こうじや)」と突然、私が叫んだ。 昔と同じ場所に麹屋が今も商売をしていた。 「レイちゃん、見て、見て、麹!」と私は言い、 「麹?麹ってなに?」と娘は言う。 「おじいちゃんとお婆ちゃんが、ここで麹を買(こ)おて、味噌を作ってたんやんか。」 「そろそろ、味噌を作らにゃぁ・・・なぁ。」 この時期になると、父は、よく母に言っていた。 麹を買った来て、二人で味噌を作っていた。 二人とも仕事で疲れていたのに、楽しそうに味噌を作っていた。 売っている味噌を買った方が、手間がいらず、体も休まるのに、作るのがあたりまえのように作っていた。 父や母があたりまえのようにやっていたことが、私は、しない、出来ない。 けれど、龍野の麹屋さんには、いつまでもそこで店を開いていて欲しいと勝手なことを思う。 もろぶた、麹、味噌、ゆったりとした時間、そして元気だった父や母・・・。 なくしたものを思いながら、涙が出そうになった。 麹屋の前の「もろぶた」に入った麹は、白い花のように見えた。 白い花のような麹を見ながら思い出したのは父だった。 ■参考日記■ ◎民具:もろぶた◎ ●父の麦わら帽子● ■□■テレビしびれて■□■ ★てるてる家族 ![]() ◎自然と人間が仲良く暮らしていたころの話です。 ★11月23日「小さな村の小さな家」・・・山への道 UP お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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