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カテゴリ:トリニテイ・イン・腐敗惑星
■トリニテイ・イン・腐敗惑星■第15回 (飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ 第15回(第12章) 腐敗惑星である腐肉の地表上を、トリニティは歩んでいた。 「何よ。これ、ここが地表なの。ここを歩けというの」 「しかたがないじゃろう」地下羊宮の擬似映像チャクラの声が、服の中にあるモニターから流れてきた。 「お願いだから、羊宮に戻してよ」 「だめなのものはだめじゃ」 腐肉の大地を歩くのに最初は苦労した。今では何とか、チャクラがトリニティのために 造ってくれた特殊な靴のおかげで、沈まずに歩いていける。 これまでのあいだ知識生命体にはあわずにいる。存在するのは腐肉を喰べていきている 小動物だけだ。あとはかってロケットや何かのわからぬ機械の残滓の山々。また延々と続 く腐肉の大地。所々にある体液や腐敗液の池だった。あまり遠くを見通すことはできない。 「あ-あっ、地獄めぐりだわ、もう、いや」 トリニティはマスクを顔の前につけている。 この大地の臭気を、直接肺の中にすいこんだらむせかえってしまうだろう。あの居心地の いい地下羊宮チャクラのエアーコンディショニングの中で生長したのだから、ここは確か に地獄だろう。 「なぜ、こんな所を歩かきゃならないの」彼女は不満を述べている。 トリニティは何かの大きな骨格をは発見し、その上にすわって考えて始めた。 (一体《禁断の実》なんてどこにあるのかしら。実ってことは木があるわけよね。でも森 林、いえ木なんて見たことがないわ。 ひょっとして、羊宮チャクラみたいに、地下に生存エリアにあるのかもしれない。でも どうしたら見つけられるの。 なぜ、ちゃんと教えてくれないのよ。早く見つけてチャクラのところへ帰りたい。こん な所もう、うんざり。 チャクラはそれについて何も教えてくれなかった。それとも《禁断の実》なんて、どこ にもないのじゃないかしら。それに《禁断の実》を発見してどうしたらいいの。わからな い事ばっかし。あたしには荷が重いわ) 何かがトリニティを観察していた。そいつは地下で数百年の眠りからさめたところだっ た。トリニテイの歩く感触で、そいつは敏感に目覚めたのだ。大きな音をあげてそいつは 地表にたどりつく。 腐肉の中からようやく出現したそいつは、トリニティの前に顔を向ける。 「あなたは誰」 そいつは、トリニティに叫ぶ。トリニティはこれが地下羊宮チャクラがつくり、逆らった「戦闘16面体」かしらと 驚いている。 (いやよ。まだ心の準備ができていないわ) 地下羊宮チャクラの中枢頭脳は、彼女の視 線と同一化していた。彼女のみたもの、感じたものがすべて脳波となって、チャクラのと ころへ送りつけられていた。 「しまった。あやつ、まだ生きておったのか」チャクラは独りごちた。 「あなたこそ一体誰なの」トリニティはその生物に尋ねる。 「あなたが先に名乗りなさい。この星では生きている人間など見るのはひさしぶりよ。あ なたが生きていられる事が、不思議だわ」 「そんな事を言われてもこまる。あたしはトリニティ。チャクラに育てられたのよ」 「チャクラですって」その生物はニヤリと笑ったようだった。 「チャクラならやりかねないわね」 「どういう事なの、それ。それにあなたこそ生物でしょう。なぜこの星で生きていけるの よ」 「ほっほっほっ、おもしろい事をいう女の子ね。なぜ私が生きているかですって、チャク ラから聞いていないの」 「どうやら、その顔は聞いていないようねえ。それなら……」 その生物がしゃべりかけた時、上空から突然、銀色にきらめく物体が降下してきた。 そいつは自ら浮力を持ち、空間を自在に移動できるようだ。 (続く) 1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.01.29 01:26:51
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