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■ロボサムライ駆ける■第三章 霊能師(5)
■ロボサムライ駆ける■ 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/携帯電話版ロボザムライ ■第三章 霊能師(5) 東日本と西日本を分けている部分は、関ヶ原である。 霊戦争後、東日本も西日本も地形が変化したが、昔の関ヶ原あたりに電磁ベルトが十メートル幅で、日本を分断していた。 国境ラインに張り巡らされている電磁バリアに加えて、西日本側の前には球形の飾りが数万飾られていた。それが陽光を浴びてにぶく光っている。 その光の元は、東日本へ逃亡をはかったロボットの頭であった。 その霧のかかる国境線に、三人のロボットがこっそりと蠢いていた。 あたりを見回す。 「あんた、大丈夫かい」 幼い子供ロボットを抱いている母親が、父親のロボットに尋ねた。 三人ともぼろぼろの風体である。逃亡ロボットである。 「ここまで、無事にこられたのだ。問題はない」 皆を安心させようと父親は言う。 「でもさ、あのみせしめのロボットの頭ぞろえが不気味だよ」 母親は、死のあぎとである国境境界線を、首を見た。 「何言ってるんだ。いいかい、何度も話し合ったじゃないか。東日本へ入れば、専門職ロボットには、いくらだって仕事があるんだ。いい暮らしができる」 希望の気持ちを込めて、父親は励まそうとした。せっかくここまで来たのだ。これまでの苦労が、彼の頭の中で、目覚ましく思い出されて来る。 「本当だね。そうなれば、この子供も人権を認められるという訳だね」 母親が付け加えて言った。気分を変えようとした。が、 「そうはいかぬが花よ」 上空から、誰かの言葉が聞こえて来る。 「誰だい」 二人はゆっくりと回りを見渡す。声が変わっていた。 「ここは地獄の一丁目よ。よくここまでたどり着いた。誉めてやろう」 三人の前にロボ忍が数名飛び降りて来る。回りを取り囲んでいた。 「逃がしておくれよ。あんたらもロボットじゃないか」 哀れをもよおす言葉である。 「くくっ、同じロボットだから、逃がすことかなわぬ夢としれい」 「お金なら差し上げますよ」 父親は卑屈になっている。 「金なんぞ、何の役に立とう」 「よいか。ロボットの法律。足毛布博士の法則を知っておろう」 「へん、何をいってるんだ。その足毛布だって自分の作ったロボットに逃げられたじゃないか。私ら庶民だって真相を知っているんだよ」 強気になつて母親が言い返した。 「ふふっ、それを知っているなら、なおのこと生かしてはおけないのう」 「止めてくれ」 父親がしゃがみこむ。 「せ、せめて、この子供だけでも……」 母親が泣きをいれる。 「できぬ相談。ロボットの電磁記憶は永久に消えぬ事を知っておろうが」 「やれ」 「あなたら、人間じゃないよ」 つい母親が、やけくそに叫び声をあげていた。生きる望みが断たれたのである。 「そうじゃ。それゆえロボ忍者じゃ」 憎々しげにロボ忍は言い、殺戮の喜びに打ち震える。 三人の回りに一陣のつむじ風が起こった。口をパクパクさせている首が三個残っている。離れたところに胴体がバタバタ動いている。「新しい首の組み合わせ、面白かろう」 「ロボットに対するよき教訓となろう」 「ふははは」 ロボット忍者にとつてこのような事は朝飯前なのだ。 笑い声を残し、ロボ忍たちは去って行った。首だけになったロボットには、まだ命の残滓が宿っている。 「あ……、あんた……、まだ意識があるかい……」 母親のロボットがかすれた声で尋ねる。 「ああ……」 「こ……こんな世の中……、潰れればよいのに……」 「つ……潰れるよ……、絶対にな……」 声がだんだん小さくなって行く。 ロボットの生命液が頭部から少しずつ流れ出て行った。 一陣の風が、彼らの生命を連れ去っていた。 (続く) ■ロボサムライ駆ける■ 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ 携帯電話版ロボザムライ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.05.31 20:02:07
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