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2020.01.09
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暗い岩の抜け穴に三人の猫の姿があった。

先頭はおなじみ喜利、続くは男のキジトラ猫喜二男、更に続くは女房の露穂路。

喜利はまたもや源じいの目をかいくぐって、二人の牢人の脱出を手助けしていた。

暗い抜け穴には松明の炎が揺れていた。

やがてその明かりも薄れてしまうほどの眩い光が目に飛び込んで来た。

喜利は後ろを振り返り少し待つように合図した。

朝日が昇り始め、小鳥のさえずりが冷たい空気にぴんと響き渡った。

彼女は外へ出ると辺りを見回し、誰もいないことを確認して、喜二男夫婦に手招きした。

三人は森へと抜ける茂みに近づくと、喜利は指笛で百舌鳥の声を真似た。

だが、百舌鳥の声は山の奥へと消えてこだまさえ戻っては来なかった。

喜利は不吉な予感に襲われた。

 

その時。

周りから山賊の手下たちがぞろぞろ姿を現し、最後に猪の頭屯蔵が巨体を揺らしながらのしのしと現れた。

「喜利、仲間は来ねえぞ。子分どもが今奴を追っているところだ。やはりお前の仕業だったんだな?」

喜利は二人を後ろに匿い、屯蔵に向かった。

「私をさらって来たあんた達への仕返しさ。ばれちゃ仕方ないね?十分楽しませてもらったよ。だけど頭、この二人だけは逃がしてやっておくれ。二人の幼い子供がまだ山の中をさ迷っているらしいんだ。早く行ってやらなきゃ、その子山ん中でのたれ死んじまうよ。代わりに私がどんな罰も受けるからさ。」

そう言って喜利は前に進み出た。

「喜利さん、いけねえ。おら達のためにそこまでやってもらう義理はねえ。」

喜二男は必死に頼んだ。

「そうだよ喜利さん。あなたはとてもよくしてくださった。私たちも残って一緒に罰を受けるわ。」

露穂路も言った。

「そんなことをしちゃ、あんた達の子供は・・・・・」

 

「お父ちゃん、お母ちゃん。」

その時後ろから子供の呼ぶ声が聞こえた。

茂みが揺れて、木の枝をかき分け、雲を突くような大男が現れた。

そしてその方には芽恵がちょこんと座っていた。

 

小文吾だ。

 

山賊たちはその男を見て一斉に後ずさった。

あの時、谷底に散々投げ捨てられたあの男だったからだ。

だが屯蔵にも今度は強い見方がいた。彼が後ろへ合図すると、十尺はあろうかという巨大な樋熊が現れた。

六尺半の小文吾と言えど、まるで子供のように見えるほどだ。

だが小文吾は臆することもなく、静かに芽恵を母親露穂路に抱かせると歩み出て行った。

芽恵は怖さで露路にしがみついた。

やがて、小文吾と樋熊の死闘が始まった。

小文吾は樋熊の鋭い爪と牙を巧みにかわして、急所を一瞬の突きで攻めて行った。樋熊は怒り狂い、正気を失って小文吾に襲い掛かって行った。

二人の死闘を尻目に山賊は喜利たちに迫って行った。

そして、あわや襲い掛かろうとした瞬間、信乃、現八が現れた。

「おいお前たち。今までの悪事決して許さぬ、観念しな。」

現八はそう言うと腕をまくり上げた。

「おお、お前あの時の・・・」

屯蔵は現八とともにいる信乃に向かって言った。

「私だ。あの時の礼はたっぷりさせてもらう。喜利さんには指一本触らせはしない。」

そう言って信乃は刀の峰で構えた。

三人の八犬士と山賊山烏一家の戦いが始まった。

そんじょそこらの荒くれどもには八犬士に敵う者はなく、たちまちの内に山賊たちの山が積み上げられていった。

ごんべえ、やそきち、じろべえ、げんた、たろうざ、げんご、げんごの弟、へいたろう、さげんじ、しろう、ぜんた、たえもん、ごんきちと次々と山と積まれて行き、屯蔵もそのてっぺんに飛んで行った。

「えーいっ!」

最後に小文吾の掛け声とともに、百貫を超える樋熊のさじの体が山賊の山の上に落とされた。

 

「ううぇ~」

山賊たちのうめき声が響いた。

 

そこへ現れたのは扇谷奉行所の取り方たちだ。

山中で喜二男たちが山賊に襲われたらしき後を見つけ、雷が志茂のもとへ走り呼んで来たのだ。

「志茂様、お駆けつけいただきかたじけのうございます。」

信乃はそう言って頭を下げた。

「お三人方、お手柄じゃ。礼を申すのはこちらの方じゃ。」

そう言って志茂玲央は取り方たちに手際よく指図した。

「この者どもよろしくお願いいたします。」

現八が言うと玲央は振り向きにこやかな顔で言った。

「そなた達には何から何まで世話になり感謝しておる。一つ耳寄りな話がある。」

玲央の話では、扇谷家と里見家は敵対する仲ではあるが、そんな中玲央は丶大に偶然出会い一人の若者を伴い名前を犬江親兵衛といい、仁の珠を持ちわき腹に牡丹の痣を持つらしいという事だった。

彼らは下野の国に八犬士の一人と思われる噂を聞き向かったというのだ。






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最終更新日  2020.01.09 00:00:22
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