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カテゴリ:ニャン騒シャーとミー八犬伝
武田家家臣の泡雪奈四郎(あわゆき なしろう)は密通相手である甲斐国猿石村村長の後妻の夏引から、浜路が安房里見義成の五番目の姫であることを知らされた。 その時、浜路の出自を確かめるためにたまたま逗留していた犬塚信乃を木工作殺しの下手人に仕立てようとして捕らえ投獄し、浜路姫も連れ去られた。 だが信乃と浜路姫は、螺良猫団を率いる猫族佐飛の計画と手引きのもと泡雪邸に潜入した犬山道節と犬坂毛野により助け出された。 浜路姫が安房の国から鷲にさらわれたとき、伏姫により魂を分けてその一つを植え付けられた信乃の許嫁である浜路が網乾左母二郎に殺された後、伏姫に仕える瓜太という猫に導かれ、彼女の魂は浜路姫に宿っており、目覚めたとき信乃と異母兄の道節に自分であることを告げた。 道節と毛野は親の仇を討つために武蔵の国に向かい、信乃と浜路は佐飛の甥の千代と共に小文吾が四六城家を訪ねて来るのを待つために、四六城家に向かうことにした。
今信乃と浜路は木工作への恩に報いるために四六城家の近くの空き家に潜み、彼の菩提を弔っていた。 四六城家は泡雪の手の者によって閉じられていたからだ。 四六城の様子を調べて来た千代が信乃と潜む空き家に戻って来た。 「相変わらず泡雪の家来が屋敷を見張っているよ。信乃さんと浜路さんがきっと来ると思っているんだな。」 千代はハートの模様のある後ろ頭を壁に預けるとため息をついた。 「小文吾が来るまでだ。そしたら四人でここを抜け出すまでだ。」 信乃はそう言って二人を安心させようとしたが、確証があるわけではない。 「はい千代さん、ご苦労様。」 お茶を運んできた浜路が千代に差し出した。 「ありがとう、浜路さん。」 そう言って千代は茶碗を受け取りごくりと飲んだ。
「殿、未だ犬塚と浜路姫が現れたという報告はござりませぬ。」 家来の報告に泡雪の目は雲った。 浜路姫を人質として里見家への交渉の切り札にしようという目論見が外れた上に、犬山道節と旦開野(あさけの)に煮え湯を飲まされたことにも腹を立てていた。 もとはと言えば彼の浅はかさが招いたことだが。
「あともう少しだよ小文吾さん。ほら十歩進んだら左に曲がるんだ。」 視力を失った小文吾の肩に乗り、目の代わりとなっている顔にハートの模様を持つシャム猫の雷はささやいた。 小文吾が道を左に折れると、目の前に四六城家の屋敷が現れた。 彼が歩を進めると、屋敷を見張る兵士の一人が小文吾に歩み寄り問いかけた。 「お前は誰だ、名を名乗れ。ここに何の用だ?」 「小文吾さん、待てたんだよ。おいらだよ千代だ。佐飛おばさんがいつ来るかいつ来るかって、もう何日も前からうるさいのなんのって。現八さんと荘助さんは元気かい?」 兵士の後ろから話しかけて来た猫族の若者がにこやかに立っていた。 少し怪訝な顔をした小文吾だが、千代の言葉に意を得て言った。 「佐飛おばさんは元気かい?」 千代はうなずいて手招きした。 「おばさんの家はこっちだ、案内するよ。」 小文吾と雷は憮然とする兵士を残して千代に従った。
「旦開野さんが八犬士の犬坂毛野だとはなあ。私たちはまんまと騙されていたわけだ。」 そう言って小文吾は信乃に向かって苦笑いをした。 「小文吾、そなたの目はどうしたのだ。」 小文吾は山賊の一味の悪女船虫に毒を飲まされ視力を失ってしまったことを話した。 「その船虫って、おいらが犬村大角さんの所に行ったときには、化け猫が化けた偽一角の女房だった女なんだ。」 「だが、二人とも無事でよかった。それにこれで八犬士はすべて現れたのだし、私たちもいざ安房の地に向かうとしよう。」 雷の言葉に信乃は言ったが、雷は首を振って言った。
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