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カテゴリ:ファンタスティック・パロダイス
「大将、大将~!」 赤鬼が血相を変えて飛び込んで来た。この鬼は大将がまだ体長一寸の一寸法師と呼ばれていた時分に、飲み込まれた腹の中で胃袋を針の刀で散々突き刺して、堪らず降参したあの鬼である。 「大将!桃太郎というガキが手下を連れて殴り込んで来ました!」 鬼の大将はぐでんぐでんに酔っぱらい赤鬼かと思う様な顔を歪ませ怒鳴った。 「手下は?」 「へえ、犬一匹、猿一匹、雉一羽で。」 「何~?そんなものお前たちでとっとと始末しろ!」 「オオ!」鬼たちは部屋を走り出て行った。 「料理長、雉鍋の用意をしろ。警備体長、番犬の小屋を空けとけ。宴会部長、猿まわしを連れて来い。」大将はにたりとほくそ笑んだ。
その戦いの様子は童話「桃太郎」の通り....
「こら鬼ども!村人から奪った金銀財宝洗いざらい返してもらおうか?」 ここで、それまでひれ伏していた鬼の大将は、その「桃太郎」の話とは違う台詞を言い始めた。 「もしやあんた、俺の兄さんじゃないか?」 「何?俺に兄弟はいない。何せお爺さんとお婆さんの話じゃ俺は桃から生まれたらしい。」桃太郎が言うと大将は頷いた。 「やっぱり。俺はコロボックル(霊長類ヒト目コビト科エゾコビト属の小人で今の北海道に数多くの逸話が残る)のカムロイだ。俺の兄さんは生まれた時に先天性ホルモン異常で巨大化すると診断され桃に詰められ川に流されたんだ。カヌア兄さん!」 桃太郎は意外な所で意外な自分の出生の秘密を告げられ戸惑いながら聞いた。 「コロボックルと言ってもお前十尺はあるじゃないか?」 鬼の大将の百寸法師は涙ながらに身の上話を話して聞かせ、「俺もこの鬼が島に来て初めてこの衝撃の事実を知ったんだ。」と結んだ。 ひしと抱き合うコロボックル兄弟。周りで唖然とする鬼たちも思わず涙を流した。 こうして桃太郎のカヌアは弟のカムロイを村に連れ帰り、今までの非道を謝罪させ、お爺さん、お婆さんとの四人家族で仲良く暮らしたとさ。
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