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詩誌AVENUE【アヴェニュー】~大通りを歩こう~

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2015年03月29日
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カテゴリ:詩集Link

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 いつの日だったかしら、

 わたしがここで死んだのは。

 わたしのこころは、まだ、どこかにつながれたままだ。

 こわいぐらい、静かな家だった。


        田中宏輔「むちゃくちゃ抒情的でごじゃりますがな。」より




   *


 言葉を見てる、見てる、見てる



 無邪気に貝をひろっていた。

 スパアクするカアブするこの惑星の春の目覚め。

 貝殻の中の小さな海にも冷たい空が匂うように光るから、

 腐蝕した玻璃の破片と呼ぼう。

 触れられたくない別の側面を立場や考え方で誤魔化すのは、

 今更もう墓へと運んでゆくよりほかはない死の谺であるからだろう。

 ある人はテロ行為が本当に悪いのかと言う。

 暴力が絶対的に悪いのかと言う。政治は暴力ではないか。

 愛それ自体が暴力ではないか。

 みんな好き勝手なことを言う。そしてその好き勝手を許しているのは、

 僕であり、君であり、われわれなんだっていうこと。

 ずっと黙っていた埃を払えば、炎は金粉のようにも見えよう。

 いかなる嘘にも、生命力あふれた千匹の蚯蚓の気持ち悪さを見たような、

 それゆえの美しさがそこにあろう。

 愛が、人を傷つけることにふさわしいマイナスイメージが、

 Cクイック。バックアタック、スパイクサーブ。

 原形を失いまったく機能しない、快楽のもっとも初歩的な、

 玩具の部屋で水辺のゆりかごが売春婦する。

 肺のなかへ爽涼と汐風が入る。

 なめくじが時間を這うほどののろさで。

 影もないドアをすぎて、何年後かの後にペンキの匂いを思い出す。

 そしてそれはJoker を振りかざして。

 僕等は言わなくてもいいとも言った。わかるからと言った。

 そうだ、わかってもわからなくてもどちらでもよかったから。

 オペラグラスでアラベスク風な雨を見てる。

 砂漠に蒔かれた植物の種のように何の感慨もなく見てる。

 人は見たいものにしかみないから、僕にだって見えないものがある。

 たとえば、聖書が廃品回収に入っている。

 その男の腕に、いつか錆びてしまったブレスレットがある。

 そしてそこから僕は前世や因縁にまで想い馳せてしまう。

 というのは、まるっきり嘘だ。でも、最初に聞こえていた波の音は、

 時々予想だにしない形で、あの工場のプレス音へと移り変わる。

 イタリアで聞いていた夜の道路の音に切り替わる。

 錯覚。連想。確かに、それはそれで美しいよね。さみしいけど。

 はっきりとは聞こえないけれど、

 落ちていく絵本の世界で、

 この色ばかりのあざやかな色彩をえがき、

 枯れて落ちていった木の葉。

 未完成がばら撒いた陰惨なエゴイズム。

 こわすではなくて、破壊する。

 はじめるではなく、誕生する。

 そして遠くまで歌がきこえる。

 オレンジの波に揺られながらブランデエ色のあじわいが、

 異例で破格のよろこびを添える。

 歌は蔓草のように儚くそこにある。

 理解できないコードは、デコンポリューションされて、

 苦い散薬となったろうか。

 星を見るために夜は暗くなったろうか。

 でもある人が言ったよ、信号を意識的に見るために夜が暗いのかと思った。

 耐性メカニズム、保守のなかで、それは革命。

 しかし脂溶性であることから感覚組織への、

 移行性にすぐれているがまだ見慣れない。

 人それぞれのまったく別な旅行があるのに、僕等はそれを、

 目の上のたんこぶじゃなく、頭の上の雲にしてしまった。

 まだ来ない、春をポスターにする。

 まだ何も傷つけられていないものにまで、ガーゼする。

 叫び声を、踏切の音だと言い募る。

 ぴったりとくっついている常識と僕自身の当たり前をさらけだしながら、

 とざされた扉をあてもなくノックし続ける。

 歌は死ののちも微妙な心理を孕んで驢馬の耳みたいに垂れているだろう。

 僕は宮澤賢治を研究する詩人がとてつもなく嫌いで、通俗的で、

 アカデミズムだと看破する。けれど、宮澤賢治が本当に好きな人も、

 その中にはいるんだろうということが淋しい。

 現代の宮澤賢治は航空機から爆弾を投下しているかも知れないのに。

 ああ、否定的な調子に合わせて使う、いいえ、で。

 物と物の記憶は咽頭炎というより、編桃炎。

 時は過ぎ行く。物理的・化学的な反応が極端な形で増大する、爆発。

 ただそこに在るだけで欠けてゆくばかりと知りながら、

 絶えず僕はそこにありえない形のイメージを押しこんで考えた。

 誇張なのか飛躍なのか妄想なのか、ああ、時間は絶えず生まれた頃の記憶を。

 夜があまりに長いので、

 ひとつふたつと数えた子守唄のレヴェルにまで引き上げて。

 少しずつ花色が変わってしまう。

 顔を掻きむしってまたFakeを始めている。

 嘘がさらに連想となってイメージのプリントを始めてゆく。

 硬い骨の色になってしまう、空の月も。

 空に届こうとしている緑のブランコが揺れる。

 また、言葉一語一語を美酒のように飲み干す。

 夜があまりにも長い。

 そして僕は咽喉の凹みが引き金に似ているなとぼんやりと思う。

 必要のないことが美しくて、さみしいことが本当だと実感しながら、

 それでも、必要のあることも美しくて、さみしいことも、情念の問題で。

 おこたらない注意の中にあっても、

 心はもう華やかな若さをなくしている。

 僕は直方体のバスを見てる。

 クレヨンより色鉛筆に似てる空の色を見てる。

 まろやかな蒼い小石を探しながら、

 まっ白い化石となって。

 乾燥した感じの陽射しにくすぐったく踊る羽虫を見てる。

 そしてさっき、また、僕の人生の価値観を否定したくなった。

 醜いものが美しいなんてどうかしてるって!








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最終更新日  2015年03月30日 06時45分07秒
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