もうひとつの昨日にいるのかもしれない。
(ジェラルド・カーシュ『ブライトンの怪物』吉村満美子訳)
同じ夢を見ていたのだろうか?
(イタロ・ズヴェーヴォ『トリエステの謝肉祭』8、堤 康徳訳)
田中宏輔「YOU TAKE MY BREATH AWAY。」より
*
洗濯
人生の大半は退屈なこと
わたしたちはあきれた
そこで靴下を脱ぎ
蒸れた足のにおいをかいでいる
犬みたいな貧しさ
人にやさしくする
人に――
思う以上に
わたしたちは
わたしというエゴに
苦心惨憺しているらしい
名前を無数に連ねた
引用の海
肖像は水に浮く
帰れない海のくらげたち