秋の蝶
タンクトップの背に、
水着の痕があざやかに残る少女がいなくなる秋。
夏の緑の輝きが褪せたあとでは、
風景は無味乾燥にしか映らない。
でも知っていますか?
蝶や蛾は足繁く花に通うけれど、
花粉を運ぶ仕事をあまりしないこと。
それで花たちが進化したことを。
口を精一杯伸ばさなければならないような、
花の深いところに蜜を隠したり。
花粉自体が粘る物質で覆われていたり、
また糸のようなものでつながっていて、
からみつきやすくなっていたり――。
きらりと光って消える舟や、
カーヴミラーにうつる軌跡。
羨ましそうな顔、
口惜しい顔、
疲れた顔、
泣いた顔、
このどれにもこのような自然に形成された、
筋道があるはずです。
素朴的な性の牽引。
そこには、生の興味や、性の感覚があるのですが、
噛めば噛むほど味がなくなる、
ガムみたいな人ばかりではないから。
とある詩人リルケは、
年少の人に冷たく、経験が大事だと謳ったものですが、
世の中、例外はいくつもあるもの、
痩せていてもたくさん食べる人はいるもの、
いま、なやんでいる、あの少女だって、
その心の内側に、刻一刻とうつろい消えてゆく若さに、
消えてゆくはかないいのちのひびきに、
向かい合っている。
でも蝶はさりげなく身を躱わす風情、
風をつかまえて、夜に吹き抜ける黒い風の分だけ、
月のうつくしさに打たれている。
原画サイズ/特大サイズ
詩とArt_Works:
塚元寛一さん &KAMOME_STUDIO
画像素材: イラa。写a