テーマ:愛しき人へ(903)
カテゴリ:父の麦わら帽子
![]() 生まれつきか、生まれてすぐか、父の右半身は不随だった。 明るく口の達者な父は身体障害者の会の会長をやっていた。 そのつながりだと思うが、30代後半の聾唖者(ろうあしゃ)のKさんもうちによく来ていた。 陽気な彼は、身振り手振りで、いろいろしゃべる。 難しいことは、土間に棒切れで字を書いての筆談。 内容は、たぶん、愉快なことだったのだろう。 声にならない声で、Kさんは笑った。 父も陽気な彼の身振り手振りを大笑いしながら答え、同じく難しい言葉は、左手で土間に棒きれで字を書いた。 父は選挙運動なども活発にやっていたので、政治の話をするなどして、Kさんは、父のいい友達だった。 ある日、突然、Kさんの死を知った。 聞けば、盲腸が手遅れになったとのこと。 「戸板に乗せて運んだそうな・・・。」 「かわいそうに・・・。 痛かったろう・・・。」 「ものさえ言えてたら助かったのになぁ・・・。」 「かわいそうに、Kさんの嫁は・・・。」 父と母は、代わる代わる、そう言いながら、涙を流してKさんの死を悔しがった。 今なら、ファックスで知らせることもできる。 Eメールで誰かに助けを求めることもできる。 しかし半世紀以上前は、知らせ手だてもなく手遅れになった聾唖者たちが、どれほどいただろう。 最近、手話を学習する人が増えた。 私も英語を習うように、手話を習ってみたいと思いながら、もう10年以上たった。 ・・・・・・・・・・・・・ ![]() ![]() ![]() ★2011年3月26日*父の麦わら帽子:目次* ・・・・・・・・・・・・・・ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2011.03.28 17:44:05
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