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カテゴリ:書籍 江國 香織
今回は久々の本シリーズ。
作者の江國香織さんは映画「冷静と情熱のあいだ」の原作を辻仁成さんと共同で書かれたことで知られており、第百三十回の直木賞も受賞しています。 【主な登場人物】 栞 (主人公)ファミレスのウエイトレスと順子さんの店で歌い手をやっている。 幸裕 栞の兄。 遥子さん 幸裕の妻 栞の義姉。 陶子 幸裕・遥子の子。おそろしく愛想が悪い。 順子さん 幸裕の愛人。かなり年配。 めぐみ なぜか「裕幸」と名乗る幸裕の妻。栞の家に居候 ナポレオン やどかり。 このほか「モンスター」(浦沢直樹)に出てきそうな不気味な双子とか陶子のベビーシッターなつみちゃんなどが出てきます。 【あらすじ】 登場人物を見ただけでかなり人間関係が複雑なのだが、基本的には栞、幸裕、遥子(はるこ、と読む)の仲良し3人がいて、でも栞と順子さんも仲が良く、わけが分からないまま栞の部屋で裕幸の妻めぐみと同居している。 始まりはごくごく日常的に隣に住む薫平くんのやどかり(ナポレオン)が行方不明になり、探してやったりしているところから始まり、このややくだけた?人間関係が明らかになっていく。 幸裕の妻遥子が「何か」を探しに家を出たところから雲行きが怪しくなり、不思議の国のアリスのウサギさんならぬやどかりのナポレオンに導かれ、不思議な世界へ迷い込みます。 江國さんの作品、というか文章はかなり詩的で普通の恋愛小説を読んでもかなりメルヘンな雰囲気を醸し出しているんですが、この作品はさらにすすんでいて、ミステリーのように何らかの因果応報があって科学的に理屈が付くという、リアリティはあえて破棄しています。 キャラメル箱から聞こえる兄の声 気が付いたらフランスにいるらしい遥子さん お風呂に入って一休みのやどかり これらについて、一切説明無し。それでもはじめは不審に思っていた栞がだんだん麻痺してしまい、(周りの人間は不審とすら思っていない)すべてを受け入れていきます。 大人向けのメルヘン小説なのかもしれません。 ただ、読んでて辛いということはなく、江國さんの技術を一番生かせるのは、こういう(絵本のような)形なのだろうと思われるので、むしろはまりすぎて反則くさいなと(笑)。 メルヘン部門と(恋愛)小説部門とがあった場合、江國さんはすでにメルヘン部門ではチャンピオン級なので、あえて、小説部門に出てきた時に「メルヘン要素のある小説」という形で持ち味を発揮されることになり、新鮮に映る。しかし、メルヘン部門では、すでに無敵なので、小説ほどのわくわく感はないのかもしれない。 とはいえ、この本を一読してみた感じでは、まだ読み足りなく、何度も読むことで別の読み方ができるような気がする。また、何度読んでも飽きさせないようなつくりになっているので、しばらく時間を置いて、何度も読んでみたい作品です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2004年08月28日 13時20分53秒
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