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カテゴリ:ロボザムライ
■ロボサムライ駆ける■第3章8 C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ ■第3章(8) 主水たちは宿泊所である新京都ホテルへ入った。 この新京都ホテルは、鯱をかたちどった五十階建ての建物になっている。 レイモンの許可を得て、主水は京都市内へ出た。使い番ロボとして知恵を連れている。主水の誕生登録場所は、京都なのであった。 レイモンについてきた主水の目的の一つが、自分の生みの親、足毛布博士に会うことであった。誰も気づいていないのだが、時折主水は病気が出ることがある。この治療について、ぜひとも相談する必要があるのだ。 突然意識が空白になるのだ。足毛布博士なら、この理由を知っているだろう。 この主水の病気は、マリアもびゅんびゅんの鉄も、きずいてはいない。 博士にどのように挨拶してよいものやら、主水は迷っていた。 実はすでに十分以上も、広大な足毛布博士宅前にたたずんでいるのだ。 「こんちわー」でもなく、「いやーどうもおひさしぶりですー」てなわけにもいかず。そう軽く言う訳にはいかない。 ともかく、博士が、主水を裏切り者と思っていることはまちがいないのだ。博士の保護から逃げたことは事実だ。 主水自体のメインボディは、実はアメリカNASA製である。対惑星探査用ヒューマノイドであった。 NASA特別ロボイド工学研究所で制作中、足毛布博士が主水をつれて逃げたのだ。ちょうどそのおり、あの霊戦争が始まって、地球上のすべての観念が少しばかりシフトした。 足毛布博士は、NASAのロボットに日本精神を吹き込んでいた。それゆえ、サムライロボットとして。主水が再生され、誕生したわけである。 徳川公国、旗本ロボットに迎え入れられたのにも一悶着があった。 現在でも、足毛布博士は、主水を自分の手にとりもどそうとしている。 主水としては、今、自分の身に起こっている体の不調調整がどうしても必要であった。それも誰にも知られないうちに。どうしても足毛布博士に会う必要がある。意識を高揚するいわゆる強化剤が、あるはずなのだ。 意を決して門の呼鈴を押した。 門にあるポールのモニターがついた。『どちらさまで』 コンピュターグラフックスでかかれたキャラクター顔がロボボイスで答える。 「足毛布博士にお取り次ぎいただきたい。拙者早乙女主水と申す者でござる。そういっていただければわかるもうす」 『博士はご在宅ではありません』CG顔は愛想なくそう答える。もっともCG顔に愛想を求めても無理な話だ。 おかしい。 主水の第六感がそう告げている。 生物体の反応がないことに主水は気付く。加えて、恐るべき悪気が屋敷に残っている。この悪気は、何だろう。主水と知恵は、屋敷内へ忍び込むことにした。 「いくぞ、知恵」 「がってんだ-い」 二人は裏手の壁からジャンプした。瞬時、二人の体を電光が包んだ。泥棒避けの機構が作動したのだ。 「あいたっ-たー」知恵が叫ぶ。 「あいたいのは、わしじゃ、知恵」 「違う、違う。か…、体が…あいてて」 「そうじゃ、わしはててごにあいたい」 「痛い、痛い……。そのシャレに腹もいたい」 何とか着地する。が一難去って…… 突然、声がする。ロボットドーべルマン犬だった。 主水は、飛び込んで来る犬をつかまえる。そして犬のある所を強く押した。瞬時、倒れるドーベルマン。 犬の首にある生命点を圧し、眠らしたのだった。 邸内に入った。 博士の研究屋は荒らされていない。が、何かの想念が残っている。どうやら、足毛布博士は、いずこかにつれさられたらしい。ロセンデールだろうか。が、なぜだ。主水は何かの手掛かりをさがそうとする。 「主水のおじさん、何かが落ちてる」 「拾い物はお前もだ」 「何を言ってるの」 知恵が拾ったものを手に取ってみる。 「これは一体、何なの」 知恵が尋ねる。それは六角形のペンタグラムだった。 「これはユダヤ教の印だが」 主水は首をひねる。 「足毛布博士って、ユダヤ教徒だったの」 知恵が、主水にも思いがけない質問をした。 「いや、そんなことはないはずだ。博士は、由緒正しき仏教徒だったはずだ。なみあむだぶつ」 といいながら、片手拝み。が、はたしてという恐れが主水の心の中に芽生えている。 今一番の主水の恐れは、足毛布博士がいないことだ。博士がいなけければ、意識をはつきりさせる強化剤の調合法がわからないのだ。家に来た意味がない。 一体どうすればいいのだ。主水は悩んだ。「この人は誰」 机の上に飾られていた立体写真を知恵は持って来ていた。 「お前、泥棒なれしておるのう」 「そんなにほめられたら、てれちょうよー」 知恵は頭をかいた。 「写真の人は、主水のおじさんじゃないの。そっくりじゃない」 が、主水のはずはない。違っている。服装が霊戦争以前のものだ。その男は、主水と同じ顔をしているが、ロボットではなく、正真証明の人間だった。 主水には写真を撮られた記憶はない。 もし、この男が死人でいないとするならば、足毛布博士の法則に触れる。 足毛布博士の法則 『現在生存している人間の顔をコピーしてはいけない』 写真をよくみる。主水の生まれる前の日付が写真に焼きこまれている。が、その写真を主水は見た記憶がないのだ。足毛布博士には、主水と同じ顔をした息子がいたことになる。が、そんな話は聞いていなかった。 早乙女主水の顔は、息子に似せて作られたのだろうか。はたして博士に息子が……。考え込む主水であった。 ロボットの顔は、作り手の好みによって作られているのだ。ある者は自分の昔そっくりに。ある者は死んだ恋人に。 二人は行方をしる手掛かりなく、博士の邸を辞した。 (続く) ■ロボサムライ駆ける■SF「ロボサムライ駆ける」第3章8 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com/ 携帯電話版ロボザムライ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.05.31 19:59:16
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