「日本はなぜ世界で一番クジラを殺すのか」
星川淳 2007/03 幻冬舎 新書 214p
★★☆☆☆
ググってみると、「日本はなぜ」とか「なぜ日本は」というタイトルの本がざっと20冊以上見つけることができる。「サルにもわかる」とか「いまさら聞けない」とか、一部出版社のシリーズものかな、と思ったが、これがまちまちで、必ずしも限定された出版人の企てではない。かなりの範囲でこのようなタイトルが横行しているようなのだ。
日本はなぜ「日本はなぜ」ってタイトルがすきなのだろう。「日本」という括りが気になるのかな。自分はこうだ、と個別性を主張するより、まず、日本人としての自分とか、他の日本人は、という横並び的感覚がどうしても顔をだしてくるのかもしれない。それに「なぜ」という疑問詞。何が、とか、どのように、とか、いつ、などより、よりなぜ「なぜ」を探求する傾向があるのだろうか。なんだか良心的で小心な国民性が見えてくる。
星川淳が「存在の詩」を出す前から注目してきたが、その抜群なコピーライティングには敬服するだけのものがある。その彼がいくらグリーンピース・ジャパンの代表になったからと言って、さて、こういうタイトルの本はどうなのかなぁ、と思う。先日のNHKテレビ「ブックレビュー」では、ベスト新書本の何番目かにリストアップされていたから、売れているのかもしれない。多分4~50冊以上あるだろう彼の著書・訳書の中では、一番売れた本となるかもしれない。めでたし、めでたし(なのかな・・)。
彼の一連の文筆活動は、このブログの前に他のSNSにざっと読書記録を残したので、そのうち、こちらのブログに転記してみようかな。ただ、その一連のなかにあっても、この本は、ちょっと毛色の違った一冊ということになるだろう。
ネット上における書評によれば、この本、必ずしも評判は芳しくない。星川うんぬんというより、グリーンピースが過去30年の歴史の中で日本人に植えつけたイメージは相当に濃い。一朝一夕にそのイメージが変わることはあるまい。
グリーンピース・ジャパン代表というポジションを引き受けた星川にはどんな心境の変化があっただろう。火中の栗を拾ってしまたことになるのか、貴貨おくべし、として彼のきわめて先鋭的なジャーナリステックな感覚になにごとか来るものがあったのか。
グリーンピース側にとってみれば、星川を「獲得」することによって、自らのイメージを変容させる準備を進めたのか。いずれにしても、歴代代表の中でも、ユニークな存在となることは間違いあるまい。