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2003.10.06
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カテゴリ:欧米露の本
誰がために鐘は鳴る(上巻)改版
誰がために鐘は鳴る(下巻)改版
( 著者: アーネスト・ヘミングウェイ。大久保康雄・訳 | 出版社: 新潮文庫 )
 下巻になり、戦闘が始まるとあとは一気に読み進むことができた。
 正直なところ、上巻は読み通すのに忍耐を要した。
 時間としては、物語は四日間ぐらいしかないのだが、台詞や回想、心理描写が長い。
 饒舌ですらある。
 最後は、こうなるのかな、と思った通りの最後になったが、感銘は残る。
 それにしても、翻訳は難しい。
 野卑な言葉を話す連中のせりふが特に難しい。
 短い例を挙げれば、
「あのワイセツな橋を吹き飛ばし、それからおれたちはワイセツにもこの山から出て行かなきゃならねえっていうじゃねえか」(上巻p86)
「わしらは奇跡のおかげで、ここに巣くっていられるだ。ファシストのやつらの怠慢と愚かさの奇跡のおかげだて。」(上巻p283)
「雌のやつが、夜明け前に、雪のなかで、何かドタンバタンやってたんだ。やつらが、どんな放埒(ほうらつ)なことをやらかしてたか、とてもおまえさんにゃ想像がつくめえて。」(上巻p90)
などという台詞がある。日本語の世界なら、野卑な言葉を使うものがいいそうにないことをいうから不自然なのだ。
 翻訳の問題というよりも、全く異なる文化のなかで書かれたものを日本語で読む、というところに無理があるのだ。
 文学は何が書かれているかではなく、どう書いてあるかだ、という高島俊男さんの言葉を思い出す。
 しかし、日本語で書かれたものしか理解できない身としては、翻訳で読むしかない。
 翻訳家は大変だ。





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Last updated  2006.12.02 19:41:38
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