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カテゴリ:欧米露の本
三笠書房・知的生きかた文庫。1998.1.10第1刷。2004.7.4第8刷。
最近妻がマーフィー博士の理論に凝っていて、すすめられたので読んでみた。 不思議な本である。 理論を生み出したジョセフ・マーフィーという人のプロフィールは次のようになっている。 精神法則に関する世界最高の講演者の一人。神学、法学、哲学、薬理学、化学の博士号を持っている。テレビやラジオを通じて、またヨーロッパ、オーストラリア、日本など各国において精力的に潜在意識の活用についての講演を行うかたわら、多数の著書を執筆し、世界的にその名を知られている。1981年没。 どこの国の人なのかもわからないし、没年だけで生年がないので、何歳まで生きたのかもわからない。 「精神法則に関する世界最高の講演者の一人」というが、「精神法則に関する世界最高最高の講演者」って、世の中にそんなに何人もいるのだろうか。 マーフィー博士も謎なのだが、この本を書いた「しまずこういち」という人がどういう人なのかはどこにも紹介がないのも不思議だ。 どこからどこまでがマーフィー博士の言葉で、どこからどこまでが著者の言葉なのかわからない。 例えば、「私は次のような例を知っています。」(p101)の「私」がどちらなのかもわからない。 日本人向けに書いているのではあるが、どうも事例は日本らしくない。 たとえば、「ここに法律家を目ざすA君がいるとします。」(p163)という例を出しているのだが、日本に「法学者」や「弁護士」ではなく、「法律家」というものが存在しているのだろうか。 さて、「黄金律」について述べると、潜在意識に刻印したことが現実化する、という理論。 「こうありたい」と思い、そうなると潜在意識が信じ込めば、それが実現する、というのである。失敗するんじゃないかと思っていれば失敗し、成功すると思っていれば成功する。 よいことを考えればよくなり、悪いことを考えれば悪くなる。つまり「人生はよくも悪くもその人の思い描いた通り」(p50)のものだというのである。 潜在意識の力によってそうなるのだが、その潜在意識は「聖者善悪の区別はなく、同情も憐れみもない」(p50)。したがって、心のそこからの悪人が、悪事をはたらいて成功しようと心の底から願えば、それが実現してしまうのである。 どんなに善人でも、潜在意識を正しく利用できなければ、悲惨な目にあったりする。 まさに「信じるものは救われる」のである。 こういう本を一概に否定する気はない。 心の持ち方を変化させることによって、精神的な安定が得られれば、生活はよりよいものになるはずだ。現世利益の強調が目立つのが気になるが、精神的な安定を求めるための本である。 「子供は親のいう通りにはしないが、親のする通りにはする」(p138)というのはまさにその通りだろう。 興味深かったのが、過度の飲酒癖(要するにアルコール依存症だろう)の克服の事例。(p127) マーフィー博士は、「お酒を飲むときは、自分にとってはいまがそれが必要なんだと思いなさい。」とアドバイスする。 酒を飲むためならどんな理由でも考え出せるのだから、逆効果だろうと思ったら、それに続けてこうあった。 「罪悪感だけは持ってはいけません」 アルコール依存症の人は自分の飲酒に罪悪感を感じることが多いという。 罪悪感は飲酒の結果である。ここでは、結果をかえることによって原因を変えていこうとしている。 こういうことが可能かどうかはわからないが、罪悪感を感じないためには飲まないしかないのだから、飲酒量が減っていくという理屈だろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.06.22 09:10:22
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