何となく、森鴎外のような文人は処世術だの俗世間での成功だのとは無縁のように思ってしまうのだが、軍医としては最高位を極めた人なので、われわれ俗人以上にそういったものを意識していたのだろう。
この本は、森鴎外による「知恵袋」「心頭語」「慧語《けいご》」の三種の箴言集を一冊にまとめたもので、それだけなら全集収録のものを見ればいいだけなのだが、実はこれは外国のものの翻案だということで、鴎外の書いたものと元のものが対照できるように作られている。
「翻訳」ではなく「翻案」なのである。
元の本の内容を取捨選択し、さらに、自分の体験を踏まえた内容を追加し、漢籍の故事を引用するなどして鴎外のオリジナルに見せかけた、とも言えそうなのだが、最初から、ちゃんと、元ネタは外国のものだよ、ということを断っていたのであった。
具体的な内容は読んでもらうしかない。
この本を読んで、森鴎外の裏の顔を垣間見たような気がしたのだが、本人としては裏も表もなかったのだろう。
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