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カテゴリ:世界とモンゴル
モンゴリアンマイニングの株価がここのところ上昇していたので、「鉱山開発には期待がもたれているんかな?」と思って見ていました。
7-8月ごろは1株0.5HKドルをウロウロしていた株価は、10月に入って上昇し、1.2HKドルくらいまで上がっていました。 もちろん、数年前までは10HKドル以上だったことを考えれば、これだってひどい水準ではありますが、それでも明確に「上昇気流」に乗ってきたかのように見えました。 それがなんと、たった1日で30%以上も下落したのです。まあ、もともと問題の多い株ですから下落自体は仕方ないかも知れませんが、その理由が増資計画にあるようなのです。 増資はいろいろな形態があるでしょうが、今回のは株主増資というものです。今現在株式を持っている株主にだけ新株を割り当てるというものです。これですと、増資後も現在の株主の希薄化が避けられるので、まあいい増資じゃないかと思います。 ところが・・・二つ問題があります。一つは、新株の割り当て価格です。発表前日の終値である1.03HKドルをなんと72.8%も下回る0.28HKドルだというのです。 つまり現在市場で「適正価格」として付けられた値段の7割引きで決まったということです。 通常の株主増資の際にも、多少市場価格から低く決められることはありますが、あってもせいぜい数パーセントではないでしょうか?それがなんと7割引きです! しかも現在の株式2株に対して新株3株を割り当てるというから、その低い株価の株式の方が過半になるということです。 近いうちにそんな安値でしかも現在の株数よりも多く売り出されるような株を、現在の市場価格で新規で買おうなんて投資家はいるはずありません。なので、株価が急落しているのでしょう。 ですが、これは新規投資家から見た見方です。要するに「嫌なら買わなければいい」だけのことです。大した問題ではありません。 ところが、もう一つ大きな問題があります。外国人投資家は、この株主増資の対象ではないというのです。つまり外国人株主は、黙って株価が下落するのを見ているだけだということです。こんな差別的な増資は聞いたことありません。 これらを勘案すると何が狙いなのか? モンゴル人株主による実質的な株の買い戻しと、外国人投資家の締め出しでしょう。外国人株主の立場になってみましょう。 この株式の上場時に10%の株を保有していた外国人株主がいたとしましょう。上場の頃の株価は7HKドル程度であり、発行株式数が37億株なので時価総額は260億HKドル程度です。この10%だとすると26億HKドルということになります。ざっと360億円程度でしょうか。 これが増資発表前には1HKドルであったとすると、7分の1です。3.7億HKドルに減っています。まあ、これは市場がそうなっているので、仕方ないことです。とはいえ、大変な損失です。 で、今回の「外国人投資家締め出し増資」でどうなるかを考えてみましょう。 0.28HKドルで15億16百万HKドルを調達したいということですから、ざっくり概算で54億株を発行するということです。そうなると、増資後の総発行株数は91億株になります。 そしてこの外国人投資家の持ち分(3.7億株)は以前は10%だったものが、増資後はわずか株式所有率はわずか4%になってしまいます。 しかもです。増資によって企業価値が上がるわけではありませんから、増資後の企業価値は現在0.7HKドルをベースにした場合の価値26億HKドルに15億HKドルのキャッシュを加えて、ざっくり41億HKドルと計算されます。 これを91億株で割ると、0.45HKドルとなります。これで計算すると、この投資家の持ち分の価値は1.7億HKドルにしかならないということです。 つまりそれ以前の相場の下落は別にして、この「外国人締め出し増資」の発表によりたった1日で価値は3.7億HKドルから1.7億HKドルに半減以下になることが判明したのです。 しかもこの計算は、現在の企業価値が26億ドルとの前提で計算していますが、株価は1日だけで30%も下落していますから、この先もっと下がる可能性があります。そうなると、この数字はさらにひどくなるでしょう。 1HKドルを14円で計算して、整理してみます。 当初360億円分を所有していたこの外国人投資家は、相場の下落によりわずか4年で52億円にまで価値が減りました。そして増資発表によりわずか1日で24億ドルと半減することが決まったわけです。 となれば、当然売りたい投資家が出てくるでしょうね。それが今回の急落の原因だと思います。それにしてもひどいですね。 じゃあ、誰が得をするのか?例えばMCSは30%くらい持っていると言われています。(正確にはわかりません) MCSの所有価値を現在の0.7HKドルをベースに計算すると、8億HKドルです。株式増資に応募すると、現在の持ち分が11億株なので17億株を引き受けます。金額では4.7億HKドルを払う必要があります。 増資後の持ち分価値はは、既存株と新規株を合わせて28億株ありますから、12.5億HKドルとなります。これは今現在の価値8億HKドルに払い込んだ4.7億HKドルを合わせた金額の12.7億HKドルと大差ありません。 つまり払い込んではいますが、価値ベースでは増資前後で大して変わらないわけです。 この発表によりたった1日で価値が半減する外国人投資家とは比べ物になりません。しかも市場でうるさい外国人投資家を実質的に締め出すこともできるのです。 ま、これが「モンゴル企業初の海外上場企業」のお粗末な実態です。今後の上場を目指すモンゴル企業への影響は出てくるでしょうね。モンゴルの企業は、投資家を大事にしない、外国人投資家に対しては差別的だと。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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