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カテゴリ:世界とモンゴル
やや旧聞となりましたが、ちょっと前に新聞に「中ロ依存に危うさ」という記事が出ていました。要するに、モンゴルが中国とロシアに政治経済的に依存していることを指摘し、このままでは危ういということを言おうとしているのでしょう。
私は「ようやく日本の新聞もちゃんと取り上げてくれたのか。どんな事実や分析があるのだろうか?」と期待しながら読みました。 内容は、「モンゴルが新型コロナウイルスやウクライナ戦争の影響を受け、隣国の中国とロシアへの依存をますます強めている。他国や国際機関、企業が再び関与しなければ、モンゴルは国際社会から遠ざかることになる。」とモンゴルの現状を憂いています。 しかし、それを示す事実は「モンゴルは現在、収入を中国市場に、交通網など主要なインフラをロシアに依存している。」と当たり前のことを書いています。それだけなんです。もっと分析とか数値があるのかと思ったら、何もない。 そして「国営ロシア鉄道はモンゴルの鉄道システムの51%の株式を保有している。ロシアの交通網への支配は、英豪資源大手リオ・ティントがモンゴル政府と合弁で運営する銅金鉱山にも迫る。」とあります。 ロシアの鉄道網がOT(オユトルゴイ)から産出される金や銅を運んでいるかのように書かれていますが、実際には中国へは主としてトラックで運んでいるので、話の筋としてはちょっと合っていません。 更に「モンゴルと世界を結ぶ航空便はコロナやウクライナ戦争により、ほとんどの路線が再開できないままだ。」とありますが、この記事が出た時点ではほとんどの空路は再開しており、大きな問題にはなっていないのです。 むしろ、新空港開港でコロナ前よりもネットワークは広がっているほどです。一体、いつの情報なんでしょうか?昨年夏でも私はモンゴルへ行っているわけですから、その前の話なんでしょうか? そして「120億ドル(約1兆6000億円)もの石炭収入が消失する汚職事件が発生し、首都ウランバートルにデモ隊が現れた。」と例の石炭泥棒の話を持ち出し、「抗議行動には、政府のビルを襲撃しようとする試みも含まれた。デモ隊は新年を迎える直前に警察によって排除された。こうしたデモがエスカレートすれば、ロシアが現政権を支えるため武力行使に出る恐れがある。」とあります。 ロシアの武力行使?本気でそんなことを書いているのか?いくらモンゴル政府がだらしないとはいえ、ロシア人に抑圧されていた社会主義時代を忘れている政治家はいないでしょう。それを大した根拠もなしに、気楽に「ロシア人が武力行使に出る」なんて書いてます。 モンゴル人は逆に、ウクライナ侵略を見て「アジアに来るなら、次はモンゴルが危ない」と危惧を抱いています。そんなモンゴル人が、どんな理由があるにせよ、ロシア人武力勢力を招き入れるはずがありません。 新聞の記事は大体これで終わりです。私はここまで読んで、「こんなしょうもない話が、一流大手新聞に大きく乗るものなのか!」と驚きました。 読めばわかるように、一切、何の取材もしていません。書かれていることは、10年前の記事と何ら変わることはありません。ここまで読んで、こんなしょうもない記事を一体だれが書いたんだろうと思い、読み直すと、文化人類学者マリッサ・スミス氏という人が書いていることがわかりました。 マリッサ・スミスで調べても出てこないので、Marissa Smithで調べてみると、、、やはり数は少ないのですが、確かに出ています。彼女は文化人類学者で、ロシア語が専門のようです。現在はアメリカの大学で中央アジア研究をしているようです。 何と言ったらいいか、語弊があることになりそうですが、「こんな当たり前のことを書くだけで、西洋人ならモンゴルの専門家のように扱われるのか?」と感じました。 とは言え、これは「日経新聞社が彼女に記事を依頼したのだから、その内容が新聞に書くべき内容であると判断したのは日本の新聞社である」という事実がありますから、彼女がモンゴルに詳しいかどうかは彼女の責任ではないような気もします。 あえて、本当の要因を探すとすれば、日本人や日本のメディアなどは、モンゴルにほとんど関心がないのかなということです。仮に過去に似たような記事や報道があったとしても、そんなもん誰も覚えてないし、気にしてもいないのでしょう。 この程度の記事なら、外語大のモンゴル語学科の学生でも書けるでしょうね。もちろん、それではありがたみやもっともらしさがないから、新聞社は採用しないでしょうけど。 中国や中東などを鋭く分析した記事がたくさんある中、モンゴルに関してはこんな何も内容がないような記事でも許されている現状が、対モンゴルという視点では情けないけど、日本の認知度の現実だと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.04.27 00:09:27
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