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カテゴリ:世界とモンゴル
そして本年4月26日の国連総会です。ここで大きな動きが出たのです。その前に、その決議案をチェックする必要があります。
安保理ではもちろんロシアによって否決され続けていましたから、決議案提案国にとってはなんとか賛成派を増やしたいのです。そのために、決議の文言をマイルドにするということは試されたようでした。 ですがこの4月の決議は、実は「ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議」ではなかったのです。この時は「国連とEUでこれからも協力していきましょうね」という何ともぬるい決議だったのです。それじゃあ、ウクライナとは関係ないじゃないかと思っていましますが、そこには仕掛けがあったのです。 まずこの決議ですが、実は国連総会にて毎年採択されている国連と欧州評議会の協力に関する決議なのです。要するに「お決まりの決議」なのです。当然、ヨーロッパ重視の中国も今までは当たり前のように賛成してきたことでしょう。ですが、今回の決議には特別な文言を滑り込ませてあったのです。 それは、冒頭部分(2ページ目)に、「ロシア連邦のウクライナ、およびそれ以前のジョージアに対する侵略に続く欧州が現在直面している未曾有の挑戦、並びにロシア連邦の欧州評議会の加盟停止は、(中略)国連と欧州評議会の間の協力強化を求めるものであることを認める」と書かれていたのです。 つまり毎年「国連と欧州評議会は協力しましょうね」という表現で決議されていたものに、ロシアによるウクライナとジョージアに対する「侵略」の文言が含まれたのです。 これに賛成するということは、自動的に「ロシアによるウクライナへの侵略がある」という事実を認定することになるのです。どうする中国?どうするモンゴル? 「欧州と仲良くしましょうね!」という決議に反対する理由はありません。今までもずっと賛成してきたことでしょう。当然ですが、各国ともこの侵略の文言が入っていることは十分承知しています。で、結果はどうなったのか? 中国、インドが賛成に回りました。つまりロシアによる侵略があったことを認めたのです。そしてモンゴルも賛成に回りました。みんな賛成かというと、そうではないのです。 ウズベキスタン、キルギス、タジキスタンは棄権です。トルクメニスタンは相変わらず欠席です。そして中央アジの最大国カザフスタンもモンゴルと同じく賛成に回ったのです。つまり今まで対応はほぼ一致していたこれらの国で、対応が割れたのです。 私は、この対応の変化にはいくつかの要因があり、それらによって少しずつ変化が起きているのではないかと思います。 一番大きい要因は、ロシアの劣勢でしょう。当初の作戦失敗はともかく、その後も攻めあぐね、ロシア内部は分裂でも起きそうなほどいろいろ問題がありそうです。 そしてNATOによる強力な武器協力がかなりととのってきたことで、反撃が近づいていることが、多くの国にとって「ロシア弱体化?」「ロシアは周辺国を威嚇している余裕なんかないのでは」と感じてきたからではないでしょうか? ここで欧州評議会との協力を正面から否定したら、今後の情勢次第ではさすがの中国、インドといえどもロシアに全てをかけるわけにはいかないという判断が働いたのではないでしょうか? モンゴルとカザフがなぜ賛成票に回ったのかは聞いていませんが、恐らく「中国が賛成するらしい」との情報を得たのではないでしょうか?それを聞いて、この機会を逃したら、ロシアの呪縛から逃れられないと思ったのではないのでしょうか? この決議を機会に、ロシア周辺国でのロシアへの忖度行動が減っていくような気がします。今、G7サミットに対抗して中国が中央アジア5か国と集まって会合やってますが、この決議一つとってもたった6か国が集まっているだけなのに、賛成2か国、棄権3か国、欠席1か国と対応がバラバラです。 中央アジア各国からすれば中国を盟主にしようなんて気持ちはさらさらないでしょうが、習をおだてて何がしかの資金を得られれば上々と考えているのではないでしょうか? モンゴルもこれを機に、ロシアの呪縛から逃れることができるといいのですが。 (完) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.05.19 14:57:38
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