人質の朗読会 小川洋子
★★★★★人質の朗読会2011年2月発行 中央公論新社 247p【内容情報】(「BOOK」データベースより)遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた。紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。祈りにも似たその行為に耳を澄ませるのは人質たちと見張り役の犯人、そして…しみじみと深く胸を打つ、小川洋子ならではの小説世界。感想 ★★★★★ 地球の裏側(おそらく南アメリカ)の地で 反政府ゲリラにより誘拐された日本人8人が 100日以上たった後の銃撃戦で亡くなった後に 見つかった現地の様子を録音した「盗聴テープ」。 そこに語られていたのは 8人の人質が体験した 不思議で 静かな でも温かい物語。 極限の状況の中で語られたとは思えないほど ユーモアも余裕も感じられる物語。 人というのは絶望の中でも これほど 崇高な精神を保てるものか。 感嘆の思いで読みました。 そして 最後に添えられた 盗聴していた政府軍兵士の物語。 そこに語られる日本人人質に投影される「ハキリアリ」の姿。 「各々、自らの体には明らかに余るものを掲げながら、 苦心する素振りは微塵も見せず、むしろ、 いえ、平気です、どうぞご心配なく、とでもいうように進んでゆく、 余所見をしたり、自慢げにしたり、誰かを出し抜いたり しようとするものはいない。 これが当然の役目であると、皆がよく知っている。」 (本文247ページ) ただひたすら 日本に生まれたことに感謝。