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[登場人物] 新太郎・・・かつての会津藩士の息子。帝都日報の記者 万造・・・浅草の顔役。新太郎と行動を共にすることが多い 鷹司煕通・・・摂関家鷹司家先代・故人 初子・・・煕通の正妻。 鷹司常煕・・・煕通の次男。(常・・・ときわ) 鷹司直煕・・・煕通の長男。現当主(直・・・なおし) 鷹司輔煕・・・煕通の三男。安倍清明の血を継ぐ(輔・・・たすく) 菊枝・・・元芸妓。常のいいひと 鞠乃・・・鷹司の正妻の座を狙う女。直の恋人? [物語] 明治維新が成った直後の帝都・東京 そこにはいまだに、闇にまぎれ魑魅魍魎が跋扈する世界 炎を身にまとい、人を高所から突き落とす「火炎魔人」 闇夜に乗じ使い魔ともいうべき狼をつれ、人を殺める赤姫姿の「闇御前」 人魂を蒐集する男、辻斬り、大きな木箱を背負う読売、般若の面をつけたそばの屋台・・・ 新太郎・万造一味は、火炎魔人、闇御前を調べるうち、事件の裏に鷹司家の家督騒動が関係することを突き止める しかし、それは悲しくもやるせない、呪われた過去の呪縛の物語だった [観想的なもの・怒涛のネタばれあり] 「屍鬼」の小野不由美の作品 期待していたものの、ミステリというよりは、現代という時代への警鐘を込めた伝奇小説といった趣で、それでいてミステリの要素を捨てきれずみたいな作品 ミステリをメインとして読み進めたので、そのギャップで十分に味わえず 話の骨子としては、鷹司家の正統な後継者直と相続権を持たない常の葛藤を描いている 普通の相続ものと違うのは、本人同士は家督に執着していないこと それどころか、家督争いに否応なく巻き込まれることでお互いに不要な軋轢を相手に与えていることに心を痛め、自分が相続争いから「自然に」脱落することで相手に花を持たせようとしたことから悲劇が始まっている・・・ それにしても、その脱落の仕方が"?" 世を騒がせる殺人鬼となって、無差別に人を殺め、捜査をかく乱した上で、兄弟の殺害を企てる しかし、失敗し、こんな人物は相続にふさわしくないとして、自然に相手に相続権が確定する・・・ その前に、家が取りつぶしになるのでは?とか、いくらカモフラージュするためとはいえ、無関係の人間を10人以上殺してから目的の人物に向かうあたりが貴族の傲慢さとかで流せるのか? しかも、こんな一見荒唐無稽な計画を兄弟そろって相談もせずに同じころに考え付いて、しかも実行に移してしまうって、単に殺人兄弟なだけじゃん! 作中では、同じ日に(妾の子として)生まれたことで、占星術的に同じような道をたどる運命だった・・・って星占いかい!!! じゃあ世の中の殺人犯と同じ生年月日の人間はみんな殺人犯候補かい!! だいたい兄貴は端から相続する気はないっていってるんだから、どっちかが相続権をほうっちゃえば済む話だと思うし いくら時代が時代だとはいえ、殺人犯になる必要はなかった。結局直のほうは、弟を護るため自ら命を絶っているし。 それができるんだったら端からすればいいだけのこと 兄弟や先代を恨んで死んでいった正妻・初子の陰謀があったとはいえ、兄弟(特に母・初子を嫌い無視していた兄が)初子の思惑に惑わされ、そのとおりに(若しくはそうならないように)動いた点も人間心理としては"?"である つくりとしては京極堂シリーズの逆となっている あちらは、妖怪の仕業に見せかけておいて、結局人間が動いていて、妖怪なんていないってスタンスだけど、こっちは、妖怪がいることが前提で(明治初期の東京のパラレルワールドという設定)、その妖怪の仕業に見せかけて人間が細工をするけど、結局妖怪はいる。 そうすると、張られた伏線のうち、いくつかが本当の妖怪のアプローチになってたりして、少なくともミステリとしては成立しない。 最後謎解きも、決定的な証拠がなく、こうしたのではなかろうかって推論の積み重ねで終わってしまっているし、そもそも謎解きの部分もほんとに妖怪の仕業かもよってことにしてしまえばいくらでもできてしまう。 だからこれは、妖怪小説の中にちょっとだけ人間の生活が写っているものってことにしたほうがいいみたい。 ちょっとやそっとの謎解きに目くじら立てないで、こんな世界もあるかもよって、それくらい緩い感じで見ておけば。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年08月17日 23時23分39秒
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