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カテゴリ:書籍
モンスターペアレントの存在がまだ知れ渡っていなかったころの実在の事件を追ったルポタージュ
平成15年6月27日朝日新聞西部本社版に教師によるいじめの実態を取り上げた記事が載ったのが始まりだった その後、週刊誌などによる後追い取材によると当該教師は、児童の髪の毛が赤みがかっていることに目をつけ「純粋(純血)じゃない」と切り出し、家庭訪問で母親の曽祖父にアメリカ人がいることを知るや「穢れた血」と児童に暴力を振るうようになったのだという 挙句「自分で死ね」「死に方を教える」等の暴言も吐いたという こうして「殺人教師」は6ヶ月停職の処分を受け、裁判により損害賠償を請求されるが、そこで意外な真実が明らかにされる [観想的なもの・ネタバレあり] 「穢れた血」「自殺を強要」・・・そんな記事を目にしたことを自分自身の記憶の中にもかすかに残っている しかし、その後どんな経過をたどったのか、そっちは記憶に残っていない マスコミの誤報・冤罪の怖さはこの辺にあるんだと思う 情報を刷り込みたいときは大々的に取り扱うくせに、自分たちの都合の悪いことはこっそりと訂正してほっかむりをするだけだから 事件の真相(と、この本で明らかにされている事柄)はこうだった 乱暴な少年Aがクラスの生徒に暴力を働いたため、軽く叩いて暴力を止めるよう担任が諭した その後、家庭訪問で少年Aの自宅を訪ね、母親から通訳の仕事をしていること、母親の祖父がアメリカ人であることを自慢げに聞かされた しかし、その3週間後、この担任は校長室に呼び出され、少年Aに対する体罰により保護者が厳重な抗議に来ていたことを知らされる 内容は後に新聞報道されていたようなことである(「血が穢れている」暴行を働く等) 当然担任には身に覚えがない。しかし厳密に体罰をしていないかといえば、暴力を諭すために軽く叩いた事が思い出された そのことを話すと校長の態度が急変し、事態を悪化させないため保護者に謝罪をすることを命じる こうして無条件降伏した学校に対し、保護者は増長し、マスコミにリーク、事件は当の教師の手を離れどんどん「殺人教師」が造られていく そして民事裁判(刑事訴訟でなく事実認定が甘い民事というのがミソ)へと突入する 裁判では、子供がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、自殺さえ考えたとし、原告側は強気の姿勢 しかし、肝心のPTSDによる精神病院への入院状況を見ると、少年の元気な姿しか記録されておらず、学校が怖く登校拒否であるはずなのにサッカーの時間には日参していたり、TVで事件の報道がされていても平然として見ていたりと不可思議な記録が提出される。しかしこれでも診断結果は「重篤なPTSD」 また、保護者が少年の証言として出されたテープでは、母親自身が学生時分アメリカで教育を受けていたかのように話すシーンがあったが、彼女は地元の学校を出ており、アメリカでの入学経験はなかった だんだんとボロが出てきた原告側 そしてとうとう、事件の原因であったはずの母親の祖父=アメリカ人であることさえも原告の虚言であることが明らかになる しかし裁判の結果は、学校側が体罰を認めているという一点において「軽微な体罰」を認定し、残りの大部分を信用性が低いと退けた 続きは控訴審で、というところで終わっている。 事件の締めとして、この事件の加害者は一方の言い分を全面的に信じ、取材をおろそかにしたマスコミ、事なかれ主義の校長(と教育委員会)、いい加減な精神科医、そして暴走した保護者 被害者は半年も精神病院にぶち込まれた少年A(ただし大半は外泊しており入院したとは普通いわない)、そして担任の先生を奪われ、大人の嘘に翻弄されたクラスメート&保護者、担任の先生ということになる こう見ると一番の加害者は保護者なんだろうけど、易きに流れてうやむやにしようとした校長が影の主役だった 彼が自分の責任でもっと事件を究明しようとしていれば、完全無罪どころかここまで大事にならなかったかもしれないのに マスコミにしても、散々煽った「週刊文春」記者は裁判後沈黙。第一報をいれた朝日新聞記者は、記事にした以降タッチしていなかったらしく、祖父がアメリカ人でなかったことやPTSD詐病について知らされると唖然としていたらしい・・・ 各人がそれぞれ自分の果たすべき責任を果たそうとしないとこんな些細なこと(親に叱られるのが辛かった少年Aが先生に責任転嫁したのが真相ではないかとされている)が全国区の事件になってしまう だいぶ極端な例だけど、これは事実だから怖い お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年11月22日 22時50分39秒
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