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酔生夢死

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2008年09月15日
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カテゴリ:書籍 宮部 みゆき



[登場人物]
本間 俊介・・・刑事。捜査中負傷し、現在休職中
栗坂 和也・・・本間の親族。彰子の婚約者

関根 彰子・・・和也の婚約者。
新城 喬子・・・彰子になりかわっていた女。


[物語]
捜査中のアクシデントにより足を負傷し休職中の本間のもとに親族の和也から相談が持ち込まれる

婚約をしていた女性に自己破産の過去が浮上し、問い詰めたところ失踪してしまっていた

失踪した女・関根彰子を追ううち、本間は、追っている女が戸籍上の関根彰子とは別人であることに気がつく

サラ金地獄に落ちた彰子とそんな彼女になり変っていた喬子

二人の間に何があったのか



[観想的なもの]
山本周五郎賞、このミスベスト1受賞作品

サラ金規制法ができる前、なんでもありの取り立てにあい、崩壊したいくつかの家族

今考えると、サラ金規制法以後の世界というのはいかに住みやすい世の中になったか

夜遅くの取り立ては"法律上"できなくなっているし、暴力なんかもしづらくなっている

暴対法なんかもあるんだろうけど、着実に日本という国は生きやすくはなっているんだろうなと昔の作品を見ると感じさせられる(法律に引っかからない新たな手口も生まれているが)今日この頃です


ということで(どういうことで???)、宮部みゆきの「火車」2回目の読了です

初版が平成10年だからもう10年も前の作品

相変わらず、プロットが冴えわたり、無駄なく物語が展開していく

普通は二人の女性の入れ替わり、というとそこのところをメインにやっていきそうだけど、宮部サンはあっさりとこの事実をオープンにした上で、二人の女性の悲劇を浮き上がらせることをテーマとしている

とくに真犯人新城喬子が追い詰められ、やむを得ず彰子の身分を奪った挙句に、その彰子も自己破産という借金の烙印が押されていたことを知った時の絶望は察するに余りある

それまでに借金のために泥水を飲むような生活を強いられていたのだから

タッチとしては東野圭吾の「白夜行」に似ているのかも

あっちも生きるために必要で犯罪を犯す二人を描き、その二人の視点を排し、周囲の人たちの視点を通して事件を浮き上がらせていた

今回も主人公は新城喬子だけど、追跡する刑事本間の視点で事件を浮き上がらせている



宮部さんの作品ははずれがなくて、それでいて何度読んでも楽しめる。また過去の作品をピックアップして読んでみようかしらん


[採点]

人物描写    ★★★★★★
世界観     ★★★★☆  
物語      ★★★★★  
技術      ★★★★★ 
インパクト   ★★★★★★ 

総合      ★★★★★


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最終更新日  2008年09月15日 15時09分06秒
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