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カテゴリ:書籍
[登場人物] 桜井 由紀・・・痴呆の祖母により剣道の道を断念した少女。文才がある 草野 敦子・・・試合中の事故により剣道を断念。由紀の親友。 滝沢 紫織・・・転入生。由紀たちとつるむ [物語] 気丈だった祖母が痴呆になったことで地獄と化した実家で耐え忍ぶ由紀 しかし、祖母はそんな由紀に牙をむき、剣道ができない体だとなる 一方で、将来有望視されていた敦子は、試合中の怪我により試合に敗れる 周囲は表面上慰めるが、学校裏サイトでは、猛烈ないじめが始まる 敦子が剣道をやめ、名門校の推薦を断った途端、いじめはなりをひそめる そして、4月、他の剣道部員たちは揃ってその名門校への入学を決めていたのだった 唯一の友人となった由紀と敦子は転校生紫織に触発され"人の死"を目の前で体験したいと切望する 由紀は病院へ、敦子は老人ホームへそれぞれボランティアに出かけるが、ふたりは思わぬ形で 巡り合う [観想的なもの] 中盤までは、物語のシンクロも弱く、由紀、敦子のそれぞれの物語が展開される それはそれで文学チックで飽きさせない筆力はあると思う 圧巻なのは終盤で、いろんな伏線がぶつかり合い、ループしあう 〈以下ネタばれ〉 1 由紀が祖母にけがをさせられる 敦子が試合中に怪我→いじめ、推薦辞退 2 由紀が敦子を癒すためだけに「ヨルの綱渡り」を執筆→国語教師・小倉に盗作され、発表されてしまう 3 敦子は小倉が"セイラ(星羅=紫織の親友)"という娘と援交中であることを知り、ネット上に暴露 4 星羅はその後、自殺 小倉も電車への飛び込み自殺→(牧野=由紀の彼氏)が目撃 5 紫織は星羅を結果的に裏切ってしまったことを悔やみながら、由紀たちの学校へ転入 6 紫織は偽チカンにより(大人=おっさん=昴の父)たちを嵌め、お金をせびりとっていた 7 どんくさいおっさんは家族と仕事を失い、老人ホームで雑用夫に 8 由紀は病院で余命わずかな昴に、敦子は老人ホームでおっさんに出会う 9 由紀は昴の死を"彩るため"におっさんを探す 10 敦子はおっさんに「ヨルの綱渡り」の本当の意味を聞かされる → 仲直り 11 由紀はおっさんの居場所を知る(三条=実は紫織の父)に襲われそうになりながら彼氏・牧野の機転により情報を得る 12 昴は無事?おっさんと再会→昴は死去 13 由紀は紫織から偽チカンのやり方を聞き、(三条=実は紫織の父)から金を取ろうと画策し、結果として三条は警察に捕まる 14 父の逮捕を受け、学校で迫害を受けるようになった紫織は、星羅の二の舞となり自殺 うーん。実によくできている 淡々と書いてありながら、いろんなことが織物のように折り重なって一つの物語となっている それぞれがそれ程の悪意を持たずに行ったことが、まわりまわって何人もの人が亡くなることなる 特に紫織は、自ら偽チカンのやり方を話したことで、それが自らの父に降りかかり、自身にも火の粉が飛んでくるというループ これだけコンパクトな相関図の中で無理なく作り上げている このミス1位、本屋大賞の「告白」も期待大かも お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年04月19日 11時47分20秒
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