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2023年10月23日
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2023年ノーベル生理学・医学賞はカタリン・カリコ氏とドリュー・ワイスマン氏
2023年のノーベル賞発表は10月2日(月)に生理学・医学賞の発表があり、米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコー非常勤教授(68歳)と同大のドリュー・ワイズマン教授(64歳)の二氏が選ばれた。遺伝情報を伝える物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」を使うワクチンに欠かせない基盤技術確立の功績が認められたもの。
2023 Nobel Prize in Physiology or Medicine by Karikó Katalin and Drew Weissman
2023年ノーベル生理学・医学賞はカタリン・カリコー氏とドリュー・ワイズマン氏

2023年ノーベル生理学・医学賞はカタリン・カリコー氏とドリュー・ワイズマン氏(計量計測データバンク編集部)


ハンガリー出身の生物学者カタリン・カリコー博士


写真はノーベル賞生理学・医学賞のカタリン・カリコー非常勤教授(68歳)


写真は賞生理学・医学賞のドリュー・ワイズマン教授(64歳)

(タイトル)

2023年ノーベル生理学・医学賞はカタリン・カリコー氏とドリュー・ワイズマン氏(計量計測データバンク編集部)

(本文)

ビオンテック上席副社長カタリン・カリコー博士とCOVID-19対応mRNAワクチンの開発


 新型コロナウイルス (COVID-19)感染症のワクチン開発は10年を要するとされていたのがわずか1年で出来上がったことは驚異である。ハンガリー出身の生物学者カタリン・カリコー博士は遺伝物質の1つmRNAの研究成果を元にして、製薬会社が一気にワクチンを開発した。英国と米国のワクチン接種率は高い。いち早くワクチン接種を始めたイスラエルは国民のほとんどが接種を済ませている。イスラエルでは7割以上の人々が新型コロナウイルス (COVID-19)への抗体を保有したために、社会としての免疫力を備えるようになった。これにより早期にマスク使用のない普通の社会経済活動ができるようになった。英国と米国もイスラエルに続いた。スエーデンは独自の感染症対策をとったが、この是非については後に判定されることになる。

日本のCOVID-19感染症は東京オリンピック予選に影響した


米国代表を逃したジャスティン・ガトリンと日本で同様決勝4位の小池祐貴

 日本の新型コロナウイルス (COVID-19)感染症ワクチン接種は高齢者から始められているものの2021年6月26日現在で1割に達していなかった。東京オリンピックを一月後に控えた状態においてであった。季節性の要因でもあり7月、8月に感染が増えた。オリンピック競技は感染対策とその不安などもあって各国の予選で番狂わせがおきていた。米国では第一人者のジャスティン・ガトリンが100m競技で代表から漏れた。日本でも前の日本記録保持者で9秒97の自己ベストを持つサニブラウン、9秒98の桐生祥秀、ケンブリッジ飛鳥が代表3人の枠に入れなかった。女子では福島千里が予選落ちした。いずれもコロナ感染症に影響されて心身の保持ができなかったと考えてられる。

mRNAワクチンの開発の技術的素地とカタリン・カリコー博士の研究

 新型コロナウイルス (COVID-19)感染症対応mRNAワクチンの開発の技術面での素地となったのがカタリン・カリコー博士の研究である。遺伝物質mRNAを体内に入れるとすぐに分解されるほか炎症反応を引き起こしてしまうため薬などの材料に用いるのは難しかった。mRNAを構成する物質の1つウリジンをシュードウリジンに置き換えると炎症反応が抑えられることを発見したのがカリコ博士であった。この技術を用いて2020年に新型コロナウイルスのワクチンが開発された。

ハンガリー出身の生物学者カタリン・カリコー博士

 カタリン・カリコー博士はハンガリー出身の生物学者。国立セゲド大学(ハンガリー)に入学、1978年に卒業。1975年から1978年までは人民共和国奨学金を得ていた。大学卒業後、1978年から1982年までハンガリー科学アカデミー(MTA)の奨学金を受けて、ハンガリー科学アカデミー付属セゲド生物学センターで有機科学者のトマス・イェネーの下で博士課程研究を行い、1983年に博士号を取得。夫はエンジニアのフランツィア・ベーラ、セゲド生まれの長女は長じてボート競技のエイトでのオリンピック金メダリスト(アメリカ)のフランツィア・ジュジャンナである。カリコー博士は国立セゲド大学在学中からRNAの免疫原性を抑制するヌクレオシド修飾プロセスの解明に取り組んでいた。RNA媒介免疫活性化の研究成果によってmRNAの臨床応用への道が開かれた。1985年から米国のテンプル大学に招聘された。研究成果は非免疫ヌクレオシド変形RNAに関するアメリカ国内での特許を保有に結びついている。この研究によりmRNAの抗ウイルス応答が癌ワクチンの腫瘍予防に有効であることが明らかになった。またこの技術がファイザーとバイオンテクが共同開発したCOVID-19ワクチンにも応用され2020年には実際にワクチンが完成した。同じ技術がモデルナのワクチンにも用いられた。

米国では研究が研究が評価されないままカリコー博士は独ビオンテックに移る

 米国でのカタリン・カリコー博士の研究活動は成果が理解されないなど苦難の連続であった。2005年には同僚のドリュー・ワイスマン教授とCOVID-19ワクチンの開発につながる研究成果を発表している。この研究も評価されなかったために大学の研究室を借りる費用の調達ができなくなって2013年にドイツの企業ビオンテックに移った。

mRNAワクチン

 ファイザーとビオンテックが開発したワクチンとモデルナのワクチンは、ともにmRNAワクチンである。コロナウイルスは単独で生きることができない生物のかけらのような状態にある。新型コロナウイルスの表面にはスパイクたんぱく質と呼ばれる突起がありウイルスはここを足がかりにして細胞に感染する。遺伝物質のmRNAは突起の部分の設計図にあたり、ワクチンを接種すると細胞の中でウイルスの突起の部分だけが体内で作られる。突起によって免疫の仕組みが働きウイルスを攻撃する抗体が体内で作られるので、ワクチンを接種しておくと発症や重症化を防ぐ効果がある。

mRNAを一般的なシュードウリジンに置き換えると炎症反応が抑えられた



Ψ-シンターゼの働きでウリジンからシュードウリジンが生合成される

 mRNAを体内に入れると異物として認識されて炎症反応が起きていた。カリコ博士は同じペンシルベニア大学にいたドリュー・ワイズマン教授と細胞の中にあるtRNAという別のRNAは炎症反応を起こさないことに着目する。mRNAを構成する物質の1つウリジンをtRNAでは一般的なシュードウリジンに置き換えると炎症反応が抑えられた。この論文は2005年に発表されていた。2008年には特定のシュードウリジンに置き換えることで、目的とするたんぱく質生成の効率が上がることを発見していた。ドリュー・ワイスマン教授とはペンシルベニア大学のコピー機の前で言葉を交わしたことがきっかけである。ワイズマン教授はHIVのワクチン開発の研究をしていた。大学は二人の研究を評価しなかった。このために二人の特許を保有していた大学は010年には関連する企業に売却していた。

カリコー博士とワイズマン教授が2020年ローゼンスティール賞受賞

 カリコー博士とワイズマン教授の研究は基礎医学への功績によってアメリカの医学賞、ローゼンスティール賞を2020年に受賞た。同賞の選考委員会議長のジェームズ・ヘイバー氏は「カリコー博士らの研究はmRNAワクチンの開発にとって、最も重要なものだった。ウイルスとの闘いを根本から変える驚異的な成果で、今後はこの技術を使って多くのワクチンが迅速に作り出されるだろう」と評している。

独国ビオンテックは応用が有望とみてカリコー博士を招く

 多くの研究者がカリコー博士らの研究を評価できないでいるなか、ドイツの企業のビオンテックは研究成果の応用への可能性によってカリコー博士を自社に招く。カリコー博士は2013年に副社長に、2019年からは上級副社長に就任している。

2020年3月開発発表からわずか9か月後の2020年12月にワクチンの接種が開始

 カリコー博士が上級副社長を務めるビオンテックは2020年3月に、以前から共同で研究していたアメリカの製薬大手ファイザーとmRNAを用いた新型コロナウイルスワクチンの開発を開始することを発表した。共同開発の発表からわずか9か月後の2020年12月に一般の人へのワクチンの接種が開始。臨床試験では95%の有効性を確認している。

mRNAワクチンがパンデミック収束への道を拓くく

 米ファイザーと独ビオンテックは、新型コロナウイルスによるロックダウン下で取り組みを本格化させ、開発には当時進行中だったインフルエンザやがんの研究で得られた要素を取り入れた。両社は2020年11月9日、世界各国で行った大規模臨床試験で初となる有望な中間解析結果を発表した。2020年11月16日には、米国政府から10億ドル近くの研究開発支援を受けている米モデルナも良好な中間解析結果を発表した。いずれのワクチン候補も予防効果が90%を上回った。ともに予想を超える高い数字である。

mRNAワクチンは体内でウイルスのタンパク質を作らせて免疫を誘導する

 ファイザー/ビオンテックとモデルナのワクチンは、ウイルスの遺伝情報をヒトに投与し、体内でウイルスのタンパク質を作らせることによって免疫を誘導する。人体をワクチン工場として機能させるアイデアは異端とされていた。バイオテクノロジー企業は何年にもわたってそれを検証してきたが、ファイザーとビオンテック、モデルナはこのアプローチが有効であることを立証した。

mRNAワクチン開発にインフルエンザの研究を応用

 ファイザーとビオンテックは約4万4000人が参加する大規模臨床試験にどのバージョンのワクチンを使うかということを含め、通常なら数カ月かかる重要な意思決定をわずか数日で行った。ファイザーのドリミッツァー氏は、2009年に起こった新型インフルエンザのパンデミックで、スイス・ノバルティスのワクチン研究を率いていた。ドリミッツァー氏のプロジェクトは、過去最速のパンデミック対応として3つのワクチンを生み出した。ドリミッツァー氏はノバルティスで、mRNAを使ってワクチンをつくる新たな手法のテストを始めたのであった。一般的なワクチンが死滅したウイルスやウイルスの断片を使うのに対し、mRNAを使った手法に実際のウイルスは関与しない。mRNAワクチンの利点は開発の速さ、プラグアンドプレイにある。mRNAを運ぶ乗り物はそのままにmRNAだけを変えればよい。ウイルスが突然変異したらmRNAを変えれば対応できる。

米国のファイザーと独国のビオンテックの歴史的な関係

 ドリミッツァー氏の同僚であるジュリア・リー氏は、数年前からmRNA技術に関するパートナーを探していた。リー氏は、mRNA技術を使って癌治療薬を開発していたビオンテックがその相手であった。ビオンテックは、最高経営責任者のウグル・サヒン氏と彼の妻で最高医療責任者のオーザム・トリジャ氏が共同で設立した企業だが、当時はまだあまり知られていなかった。ファイザーのドリミッツァー氏は「私はそれほど興味を持っていなかった。われわれはウイルス感染症の研究をしているのに、なぜ癌をやっている会社を見ているのかと」振り返る。リー氏は違った。ビオンテックにはmRNAの生産能力があり、強固な科学者のチームを持っていたので、感染症の研究を一緒にやりたいと考えていた。ドリミッツァー氏はドイツに渡り、ビオンテックのメンバーと会うことにした。両社は2018年8月、mRNAを基礎にしてインフルエンザワクチン開発の研究を始めた。米国のファイザーと独国のビオンテックにはこのような歴史的な関係があった。

ビオンテックには柔軟性がありファイザーは開発の進め方を知っていた

 カタリン・カリコー博士は「ビオンテックは小さな会社で柔軟性がある。一方、ファイザーのような大企業にはインフラがあり、スケールアップの方法や開発の進め方を知っている」と話す。2020年3月初め、両社はパートナーシップを拡大することを決め、最大7億5000万ドルという契約を結んだ。ビオンテックの上級副社長を務めるカタリン・カリコー博士は振り返る。コロナウイルスのパンデミックを懸念したサヒン氏は今年1月、ビオンテックとしてワクチン開発に着手すべきと判断。サヒン氏自ら、いくつかのワクチン候補を設計した、と。

4つのプロトタイプで臨床試験

 米国のファイザーと独国のビオンテックの両社は、mRNAワクチンの働きが動物とヒトで大きく異なることを知っていた。安全性を確認する予備的な動物実験を行ったあと、臨床試験に進めるワクチン候補を1つに絞るための動物実験はパスし、複数のプロトタイプを臨床試験に移行させた。2020年4月にはドイツで、2020年5月には米国で臨床第1相(P1)試験が始まったが、両社はこれらの試験で4つのワクチン候補をテストした。ドルミッツァー氏は「ヒトに最も効果があるものを迅速に明らかにすることが目的だった」と述べる。

ワクチンはB1からB2に切り替えた

 2020年7月1日には、米国の成人45人を対象に行ったP1試験の予備的なデータを発表。4つのプロトタイプのうちB1と呼ばれるワクチン候補が最も安全性が高かった。ワクチン開発者たちは、ワクチンが新型コロナウイルスから回復した人よりも高い抗体産生を誘発する可能性があることに気付いた。2020年7月20日には、ドイツでの試験のデータから、ワクチンがT細胞の反応も引き起こすことも示された。ファイザーとビオンテックの両社は、この段階で、4万4000人の登録を予定するP3試験にはB1を使おうと考えていた。試験開始を数日後に控えた7月24日、B2と呼ぶ別のワクチン候補のデータがもたらされた。B2はB1と同様の免疫反応を示したが、高齢者での有害事象が少なかった。研究者たちはすぐに、P3試験に使うワクチンをB2に切り替えた。

ワクチンの効果を確信したのは高いレベルの細胞性免疫反応が示されていたから

 開発は急ピッチで進んだ。ドルミッツァー氏は2020年3月以降はズームでの対話を除いて妻や子どもたちと会っていない。ワクチンによって産生された抗体の強さを測る新手法を開発したテキサス大医学部のペイ・ヨン・シー博士は「緊急性、協調性、集中力、私は今回ほどそれらを強く感じたことはない」と話す。ビオンテックのカタリン・カリコー博士は開発しているワクチンの効果を確信していた。「それまでの試験で、高いレベルの細胞性免疫反応が示されていた。ナーバスにはなっていなかったし、むしろ自信に満ちていた」と述べる。

モデルナのワクチンは94.5%の予防効果を示す

 米モデルナは開発中の新型コロナウイルスワクチンの臨床第3相試験の中間解析で、94.5%の予防効果が示されている。2020年11月16日、米国のモデルナは同社の新型コロナウイルスワクチンが94.5%の予防効果を示したとする後期臨床試験の中間データを発表した。予想をはるかに上回る高い有効性が報告されたのは、「90%超の予防効果を確認した」と発表したファイザーに続き、米国の製薬企業としては2社目となる。米国では、2020年12月にファイザーとモデルナの2つのワクチンが緊急使用許可を得て、2020年内に6000万回分のワクチンが使えるようになる見通しを発表していた。米国政府は来年、これら2社から10億回分以上のワクチンを調達する。これは米国の人口(3億3000万人)を上回っていた。

私たちはパンデミックを止めるワクチンを手に入れた


新型コロナウイルス (COVID-19)

 ファイザーとビオンテック、モデルなの二組の企業のワクチンはいずれもmRNAを使う新しい技術で開発された。世界中で5400万人が感染し、130万人が死亡したパンデミックと闘う上で、強力な武器になった。モデルナのスティーブン・ホーグ社長は「私たちはパンデミックを止めることができるワクチンを手に入れようとしている」と電話インタビューで語っている。

ワクチン開発の進展に沸き立つ

 モデルナの中間解析は、ワクチンまたはプラセボを投与された被験者のうち、95人が発症した時点で行われた。発表によると、ワクチン接種群で発症したのは5人だけ。英インペリアル・カレッジ・ロンドンのピーター・オープンショー教授は「モデルナのニュースは非常にエキサイティング。今後数カ月のうちに良いワクチンが実用化されるという楽観的な見方を大きく後押ししている」とし、「モデルナの発表は、多くのハイリスク者や高齢者を含む3万人の米国人を対象とした試験に基づいている。これは、新型コロナウイルスによるリスクが最も高い人たちにも関連する結果であるという確信を与えてくれる」と話していたのだ。

超低温で管理しなくてよいモデルナのワクチン

 モデルナのワクチンは、ファイザーのそれのように超低温で管理する必要がなく、流通が容易になることがメリットだ。モデルナは、普通の冷蔵庫(2~8度)で30日間安定しており、マイナス20度で最大6カ月間保存できるとしている。ファイザーのワクチンはマイナス70度で出荷・保管しなければならず、普通の冷蔵庫では最大5日間、輸送用の箱でも最大15日間しか保存できない。モデルナが発表した中間解析結果では、ファイザーの発表ではわからなかった重症化を予防する効果も明らかになった。モデルナの試験では発症者95のうち11人が重症化したが、いずれもプラセボを接種された人だった。

パンデミック対応のためワクチンの超高速開発、そしてワクチンの接種の推進

 モデルナは、2020年のうちに米国向けとして約2000万回分を生産した。同社のホーグ社長は「緊急使用許可が得られれば、ワープ・スピード作戦を通じて数時間のうちに出荷できるようになる。すぐに配布を始めることが可能だ」と話していた。モデルナの発表によると、発症者95例には、65歳以上の高齢者15人、人種的に多様なグループからの参加者20人、など重症化のリスクが高いとされるいくつかの重要なグループが含まれている。

ワクチンの恩恵を語る各国の研究者

 ロンドン大衛生熱帯医学大学院のスティーブン・エバンス教授は「ワクチンによる恩恵がすべてのグループ、特に高齢者でも一貫して得られるかどうかを確認するには多くのデータが必要だ」としつつ「今回のモデルナの発表は、間違いなく心強い進歩だ」と指摘する。このワクチンを含む、現在臨床試験中のすべてのワクチンに共通する問いは、それらが新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるのかだ。エジンバラ大のエリナー・ライリー教授は「発症を予防するワクチンは、感染の持続時間とレベルを低下させ、結果として感染を減少させる可能性は高い。しかし、こうした効果がコミュニティ内でのウイルスの拡散に意味のある違いをもたらすほど大きなものになるかどうかは、まだわからない」と話していた。

免疫を誘導する特定のウイルスタンパク質を体内で作ら人体をワクチン工場にする

 モデルナのワクチンが採用するmRNAプラットフォームは、免疫を誘導する特定のウイルスタンパク質を体内で作らせる。いわば、人体をワクチン工場に変えてしまおうという技術で、有望だがこれまで実用化されたことはなかった。モデルナの発表によると、ほとんどの有害事象は軽度から中等度だったが、被験者の多くが2回目の接種後により激しい痛みを経験した。被験者の10%は日常生活に支障をきたすほどの倦怠感に見舞われ、9%は激しい体の痛みを訴えた。モデルナによると、こうした有害事象のほとんどは短期間で収まった。

モデルナはパンデミックのなかの2021年に5~10億回分を製造

 モデルナは2021年に5~10億回分を製造する計画をもっていて、需要によっては一部を海外で生産する方針。米国政府は、健康保険への加入の有無に関わらず、国民に新型コロナウイルスワクチンを無料で提供するとした。当時のトランプ政権のパンデミック対策は、主にワクチンと治療薬の開発に頼ってきた。モデルナは米国政府から10億ドル近い研究開発資金の提供を受けており、15億ドルで1億回分を供給する契約を結んだ。米国政府は、さらに4億回分を購入するオプションを持っていた。欧州の規制当局は2020年11月16日、モデルナのワクチンの「ローリング・レビュー」を開始した。この時点でファイザーとアストラゼネカのワクチンでは同様の審査が行われている。

2020年秋から冬にかけて中国とロシアはワクチンの接種開始


日本で委託生産されながらも使われていないアストラゼネカワクチン生産のようす

 中国やロシアなどでは、2020年秋から冬にかけてワクチンの接種が始めた。ロシアは2020年8月、大規模試験のデータが公表されていないにも関わらず、国内向けにスプートニクVを承認した。ロシアは2020年11月11日、同ワクチンの大規模臨床試験で、20人の発症に基づく解析の結果、92%の有効性が確認されたと発表している。

[資料]
以下は
2023年のノーベル賞の各賞が決まる(計量計測データバンク編集部)
ので記事にして掲載済みの文章です

(本文)

 2023年のノーベル賞発表は10月2日(月)に生理学・医学賞の発表があり、米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコー非常勤教授(68歳)と同大のドリュー・ワイズマン教授(64歳)の二氏が選ばれた。遺伝情報を伝える物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」を使うワクチンに欠かせない基盤技術確立の功績が認められたもの。

2023年のノーベル生理学・医学賞は米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコー非常勤教授(68歳)と同大のドリュー・ワイズマン教授(64歳)

 スウェーデンのカロリンスカ研究所は10月2日、2023年のノーベル生理学・医学賞を米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコー非常勤教授(68歳)と同大のドリュー・ズイスマン教授(64歳)に授与すると発表した。二人は遺伝情報を伝える物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」を使うワクチンに欠かせない基盤技術確立に貢献した。新型コロナウイルスワクチンを実用化に導いた業績が大きく評価された。メッセンジャーRNA(mRNA)の医薬品応用への道を切り開き、新型コロナウイルスワクチンの早期実現につながった功績は大きい。

 120年の歴史があるノーベル賞は社会に貢献する独創性ある発見や発明を顕彰してきた。新型コロナは100年に1度の感染症の災禍である。新技術によるワクチンが実現したことで世界的大流行の収束が早まった。医学史に名を刻む二氏の業績に対して有名な賞が贈られており、ノーベル賞が何時になるかということに関心が集まっていた。

 タンパク質を作り出す遺伝情報からなるmRNAを病気の治療や予防のために体内に投与する手法は1980年代に考案されていた。mRNAは身体に入ると壊れやすいうえ免疫反応が強いことを克服することが課題であった。医薬品への応用にどのような形で道を拓くか模索されるなか、カリコ氏らはmRNAの一部の分子に手を加えることで炎症反応げ低下することを突き止め2005年に二氏は論文を発表していた。その後にmRNA合成時の不純物を取り除きタンパク質を作る効率を高める方法を開発するなど技術を進化させ、新型コロナの流行の収束をもたらすワクチン製造を実現することに貢献した。

 新しい治療法や医薬品に対しノーベル賞は評価に10年ほどの間をおいてきた。副作用がノーベル賞の後に発生する事例があるためだ。今回の受賞は新型コロナ対応のワクチンが開発されたのは2020年末から、実用化から3年未満での授賞である。創薬技術の革新性への貢献が評価されたからだ。mRNAワクチンを実用化した製薬会社の独ビオンテックや米モデルナは、新型コロナ以外の感染症予防や癌治療などへの応用研究に打ち込んでいる。

 新型コロナウイルスのワクチン誕生につながるメッセンジャーRNA(mRNA)の研究でノーベル賞受賞が決まったカタリン・カリコ氏はハンガリー出身。新型コロナワクチン開発の成功の延長線上で、世界の製薬各社はメッセンジャーRNA(mRNA)を使う「mRNA医薬」の開発を進めている。米モデルナは世界初となるエイズウイルス(HIV)の臨床試験(治験)を始めた。独ビオンテックと米ジェネンテックは癌治療への応用に動き出した。

 メッセンジャーRNA(mRNA)を使うワクチンの実現は着想から30年を要した。新型コロナウイルスの世界的流行があったので開発は加速した。mRNAは細胞の核のなかにあるDNAから遺伝情報をコピーし設計図どおりにタンパク質を作ることができる。

2023年のノーベル生理学・医学受賞者二氏の言葉

 2023年のノーベル生理学・医学賞を受賞することが決まった米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコー非常勤教授と同大のドリュー・ワイスマン教授が10月2日、記者会見した。カリコ氏は「実験をしても、思い通りにいかないことが多い。科学の世界では失敗したときに対処する力を身に付けるのが重要だ」と語った。ワイズマン氏は「最初は資金が確保できず、出版もできなかった。mRNAに興味を持ってもらえず、臨床試験も失敗した」と技術の完成までの苦労を語った。「みんなが諦めていたなかで、2人で20年以上、どうやってmRNAワクチンをうまく機能させられるのかを模索していた」と振り返った。カリコ氏は「決して簡単な作業ではなかったが、非常に楽しく、幸せだった」と話した。

カリコー氏とドリュー・ワイズスマン氏の遭遇はコピーの待ち時間

 1997年、大学内のコピー機を使うための列に並んでいたとき二人は出会ったという。働いている部署も建物も違ったが、待ち時間で話すなか、お互いの担当分野を組み合わせた研究ができると考えた。カリコ氏は「いろんな人が話し合いするために大学にはもっとコピー機を置く必要があるかもしれない」と話すと会場に笑いの渦がおこった。今後のmRNA技術の活用についてワイズマン氏は「癌や自己免疫疾患、アレルギーのためのワクチン開発や、遺伝子治療でも臨床開発が進んでいる」と期待を語る。カリコ氏は「mRNAに資金が集まるようになり、いまでは250以上の治験が実施されている」と述べた。

mRNAはどのようなメカニズムで働くのか

病原体のタンパク質を体内で作って免疫獲得


 メッセンジャーRNA(mRNA)はタンパク質の設計図となる遺伝情報。病原体のタンパク質を作るようmRNAを設計してワクチンとして使う。投与すると体内でたくさんのタンパク質が作られる。それを身体の防御機能である免疫が記憶することで病原体が侵入した際の感染や発症や重症化を防ぐように作用する。

新型コロナ対応ワクチンとして、わずか1年で開発

 新型コロナウイルスに対しては、米ファイザーなどが2020年1~3月ごろから開発を始め、同年12月に米国などで緊急承認を受けた。現在では日本や米国など約180カ国・地域で承認されている。病原体であるコロナウイルスの遺伝情報が分かれば作れるので速

癌や他の感染症への応用も

 「mRNA医薬」は、エイズ(HIV)、ジカ熱、インフルエンザといった他の感染症でも臨床試験(治験)が進んでいる。癌治療薬を目指した取り組みが進んでいる。


2023年ノーベル賞の各賞は次のとおり

 2023年のノーベル生理学・医学賞は米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコー非常勤教授(68歳)と同大のドリュー・ワイズマン教授(64歳)。ノーベル物理学賞はアト秒パルスレーザー開発に貢献した三氏、米オハイオ州立大学のピエール・アゴスティーニ名誉教授、独マックス・プランク量子光学研究所のフェレンツ・クラウス教授、スウェーデンのルンド大学のアンヌ・ルイリエ教授。ノーベル化学賞は「量子ドット」発見と製造方法の開発した三氏、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のモウンジ・バウェンディ教授、米コロンビア大学のルイス・ブラス名誉教授、旧ソ連(現ロシア)出身で米ナノクリスタルズ・テクノロジー社のアレクセイ・エキモフ博士。ノーベル文学賞はノルウェーの劇作家 ヨン・フォッセ氏。ノーベル平和賞はイラン人女性のモハンマディ氏。ノーベル経済学賞に男女の賃金格差の要因など研究した米国ハーバード大学のクラウディア・ゴールディン女性教授。

(計量計測データバンク 編集部)





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最終更新日  2023年10月23日 00時00分27秒
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