静おばあちゃんにおまかせ
静おばあちゃんにおまかせ【電子書籍】[ 中山七里 ] ここにいう静おばあちゃんは高遠寺静元判事にして,テミスの剣で冤罪判決を出し,定年退職前に潔く退職した方。 その孫の円は,中2のときに警察官の運転する車に轢かれて両親を亡くしたが,現在静おばあちゃんと暮らす大学二年生。 祭文語りは警視庁捜査第一課の葛城巡査部長。 この葛城部長と円がいい仲になり…。 葛城部長が担当する事件の概要は円に知らされ円が静おばあちゃんからアドバイスを受けて事件を解決するというパターンである。 テミスの剣における高遠寺静判事は実にシャープな方であったが,本作においてはいわゆるユーモアミステリーにして,中山七里的にはちょっと箸休めだったかな。 それはともかくトリックの切れ味は実に鋭い。 しかしなんだろうねえ,午後12時って一体何時なんだ。 公務員であればもちろん警察官も,午後12時なんて表現はしないよ,中山七里にしてこうなのかと私はそんなことでがっかりしたのだけれど,しかしきちんと葛城と円の恋をまとめたところがじつに朝ドラ理論に基づいていて心地よかったです,ファインプレー! それからこのミステリー,大どんでん返しと言えるかどうかはともかくとして,第五章静おばあちゃんの秘密において,まさに静おばあちゃんの秘密が明らかになるのだった。 本作の読み手の方々,ここでびっくりしてはいけませんぜ。 それはそれこれはこれ,ここまで来るとどうもあたしゃあ,テミスの剣の高遠寺静判事と静おばあちゃんは別の方ではないのかという仮説を語りたくなるのだけれど… その最終第五章で,話は亡国の大統領の暗殺が日本のホテルで起きたという話,ここでのトリックですなあ,これは,ミステリーリーダーは全部みろっとめろっとお見通し状態! ケイタイをポケットに入れてから出したらそんなもん… そのほか,教祖の死体消失事件とか,超高所におけるカッター刺殺事件とか,トリック的にも恋愛小説的にもそしてユーモアミステリー的にも実によくできた作品だったと私は思う。(1/16記)