球体の蛇
球体の蛇 (角川文庫) [ 道尾 秀介 ] 本作は,今日、何読んだ? 210718ということで1回読んでいるにも関わらず,どういうものだろうか,なぜ記憶が曖昧なのかあるいは戻らないのかはよくわからないけれど,間違いなくこのブログ記事つまり210718は,的確な意見であった。 今回改めて読んでみて冒頭のシロアリ業者のシーンすら思い出すことができない自分の不甲斐なさにがっかりした。 それでも少しは記憶が残っていてキャンプのシーンやらについてはそういえばと少し思い出せたような感じのそんな中での再読だった。 今回私がミステリーリーダーになったのは定年引退後の話であって,ミステリーに関しては,江戸川乱歩賞,日本推理作家協会賞を順番に読み継いでからの話なのである。 それで本作もこの二つの賞のどちらかに入っていたことで選んだのだったろうかと思ったのだが実はこの作品がどちらにも入っていないのだった。 それでも私はこの作品は優れていると思ういっぽう不快感もあって,好きな作家というまでには至らない。 ところで道尾秀介という作家は1975年,昭和50年生まれだそうで,とすると東野の後継になる可能性もありということになるか。 さて本作をミステリーという視点から考えると,トリック不足でしょうな。 というよりこれといったトリックはない。 それでも本作の最初のシーンは乱歩を彷彿させる。 床下の散歩者とでもいうのだろうか,シロアリ業者だけに床下にいて住人の動向を探る。 顔半分を火傷した女性の姿は正史の世界でもある。 様々な偶然を装う辺りは森村的でもあり東野的でもある。 それでもこの作家に関しては今一つ東野の後継には推せない。 それは作家の命でもある文章力のなさである。 いずれ東野の後継を置かなければならないのだから道尾秀介もその後継の候補者としてあげておいてもいいのかな。 結局人間関係の綾をいかに表現するかということが現代の小説家に課せられていることかもしれない。 とにかく不快ではあったが面白い作品だった。(3/3記)