超人ニコラ
少年探偵団・超人ニコラ (岩波文庫) [ 江戸川乱歩 ] 江戸川乱歩少年探偵団全集から 本全集34冊読了。 本全集中最後の2作はたのしい1年生とたのしい2年生の特別版なので実質的な最終作は、この超人ニコラになる。 本作が乱歩自身最終作として書いたものではなかろうから、怪人二十面相のラストステージというようなきらびやかさはなかった。 ただ本作には当然超人ニコラと言われるニコラ博士が怪人二十面相であるのはともかくとして、怪人二十面相が作った人間造成工場において一寸法師と形容される変人が次から次へと写真を元にして人形を作りさらにはそれをもとにして整形して行く下りはいかにもこのシリーズらしいのだが、ツッコミを入れれば、この小説中でも書いてあったけれども、例えば少年探偵団の七つ道具を知らないなどということとかあるいは匂い、雰囲気でそのものでないことなどすぐにみろっとめろっとお見通しになるのではなかろうか。 それにしても本作において玉村家の一家四人をすべて偽物にし、その上明智や小林少年をも偽物にしてそれぞれが本物になりきって話をするくだりがあるのだが、あれは一体どういうトリックに仕上げるつもりだったのだろうか。 私は本作ではその点にとても興味があって、そこに焦点を当てて読み進めたのだけれども、結局何の展開もないまま終わったのだった。 ともかく終わった。 本全集は途中で明智小五郎全集から抜かれてしまったけれども、最後自作説明で乱歩が述べている通り少年探偵団譚は二十面相 VS 少年探偵団&明智小五郎の話であって、捕まった二十面相が何回も牢破りをしてはまた民衆に姿を見せ次々と事件を起こすそのエンドレスな繰り返しが当時の世相に受けたのだったと思う。 けだし名作である。 いやあ、小説って本当に面白い。