モスクワから来たスパイ
モスクワから来たスパイ【電子書籍】[ 高柳芳夫 ] しかしすごいもんだね。 これだけのエスピオナージが書けるなんて。 時代が東西冷戦時代ということになれば、書きやすいということもあったろうな。 本作のような殺しの現場がたくさん出てくると、政治がらみだろうが、思想絡みだろうが、宗教がらみだろうが、ヤクザだろうが、その性悪さはどの種においても変わりないということだな。 舞台は東西冷戦の時代のチェコスロバキア。 ソ連のKGBが暗躍するのだけれどもけっしてCIAも負けてはいない。 殺しという点ではどっちもどっちか。 翻ってそのクソひどい殺しは、現代においてもプーチン閣下のもとで行われている。 性悪さは、冷戦時代よりもひどくなっているのではないのか。 つい最近もどうやら彼プーチン閣下は、政敵を亡きものにしたようだし。 本作が秀逸なのは、スパイのスパイのスパイという、二重三重のスパイ合戦にある。 結局あんたはどっち? みたいな。 あまりに目まぐるしくて、収集がつかない状態でもある。 でも一気の読了である。 この作家の並々ならぬに筆力を感じる。 最近こういう作品を読まないものな。 かなり硬い。 柔な歯には答えるような硬い作品だった。 結局、この手の作品は、作家の筆力にかかっていると言って過言ではない。(2/23記)