蘇生
蘇生 医療ミステリー 松葉紳一郎 いやあ、素晴らしいミステリーだった。 何より医師が書いたミステリーだから、医療に詳細なのは当然だが、私のような文系の頭でもわかりやすいというのがよろしい。 それが熱血女性弁護士が登場して、さらに理系弁護士もつるみ、二重三重の医療に絡むミステリーを解決していくのだ。 本件は、行路病人の発見から始まる。 泥酔者が自販機の足元のブロックの角に頭をぶつけて倒れている。 通りかかりのものが119番する。 さらにそこに男のかかりつけ医だという精神科医が現れ…。 で、あまりにも様々なエピソードを出し、それがドンデンドンデンと行くものだから、一つの大きなピースが最後にはめることができず、余ってしまったな。 そもそも、死体の人間違いなどは絶対許されない。 そこを利用したのだけれど、余った大きなピース、つまり、死んでいない男は、一体どうなるのだろう。 最後に、その生き残った男とその妹の美談でを終わるのだが、 納得いかないね。 叙述をムリムリ入れたところが気に食わない。 だって冒頭の精神科医のところで、塾講師のような仕事をして、医師と一緒に進んできていて、いきなりある日、その医師の悪さを見つけたものだから、態度がおかしくなるという設定でしょう。 そんな彼が別人に入れ替わることなど果たして受け入れるものかどうか。 その矛盾はどうしようもない。 それから、井出という女弁護士がいみじくも言っているとおり、医療にしろ捜査にしろ裁判にしろ、一つ一つの甘さが見て取れる。 最後は、冤罪でしょうが。 それから、もう一つ、冒頭の医師の医院に事務員として勤めた女の結論も出ていないし。 たしかに、面白いミステリーではあったが、読後消化不良に苛まれること間違い無しの作品なのだった。(1/21記)