支那扇の女
支那扇の女 (角川文庫) [ 横溝 正史 ] 本作は154ページの中編。 まずもってほらまた出てきました,いとこの,大伯母の,という血。 血,は正史の,テ。 さて本作のポイントであるが,誰が棺に肖像画を入れたか,なぜ夢遊病者になるか,なぜ2人が殺されたのか,犯罪史は本物なのかということ。 正史の頭の中では混乱しないのだろうが,読み手は登場人物が次から次へと出てきてわけがわからなくなってしまう。 正史モノには珍しい活劇シーンもある。 舞台は神宮外苑。 パンパンと拳銃が撃たれ,可哀想なドン・キホーテやら真犯人が撃たれ,哀れ真犯人は正史モノのお約束どおり毒をあおって死んでしまう、とうびんと…とうびんとは山形の昔話の語りの最後の言葉,つまりThe end.Fine。 正史からおどろおどろしさを取ったら平板なミステリーになってしまう。 真犯人は我らミステリーリーダーには全部みろっとめろっとお見通しだい状態。 先に書いた4つのポイントを全部読み解けば自然に犯人にたどりつく。 さて本作はもう一編,女の決闘,という短編がつく。 この作品も支那扇の女同様のトリックでしたな。 傾向と対策,犯人探しで2-1=1なんて話が延々と出てきたらそれは犯人ではない説,それは非常に確率が高い。 でもその公式はヒントにはなる。 死んだはずなのに生存したわけはなんてことにこだわったら犯人に行き着く。 あとは題名。 支那扇の女,にも,女の決闘,にもある同じ漢字に注目! これは正史からの何よりのヒントですよね。(1/20記)