顔 FACE
顔 FACE 〈新装版〉【電子書籍】[ 横山秀夫 ] そうです、警察小説の第一人者は、横山秀夫でした。 それを何をとちくるって、今野敏は警察小説の第一人者で、なんてふうに書いたんでしょうね。 それはともかく、このブログには初登場の横山秀夫ですけれど、実は、夕顔絵夢二郎の江戸ハブ日記にはもう何度も登場している小説家なのであります。 彼が警察に詳しいのはそれもそのはず群馬県警の警察詰めの記者だったからであります。 ですから警察の描写にはほとんど誤りがありません。 ただリアルの問題として、なったばかりの警察官がいきなり本部鑑識課にいくことは考えなれないし、半年も休職して挙げ句、広報相談課に入るなどということも考えられない。 その上、似顔絵で3つも4つもミスをして、そして鑑識課に帰るってか。 そういう物語だからそれはそれでいいじゃないか。 私は読み手として十分楽しませてもらいました、ありがとう。 しかしそれにしても今私が読んでいるミステリーは、なんでこうもヒロインだらけになってしまったんだろうか。 その一つの理由として、本作で問題としている、女は邪魔者だという考えに対するアンチテーゼでしょうな。 そのせいで結局本作では、何人かの婦警が職場を去ってしまう。 本作は、21世紀に入った頃の話だから、制服は変わったけれど、長らく警察手帳が変わらなかった時代の話だ。 警察官の拳銃の安全ゴムなどとうの昔に取外された。 そんな、女性の生きづらい時代に、大きなミスを何度も重ねながら、結局、小学一年のときに書いた作文のとおり、婦警として(この時代は婦警と言っていたが、その後女性警察官、女警と称されるようになった)行けているヒロインの姿に感銘せざるを得ない。この他、二課の情報漏洩元の話とか女男の話とか制服横流しの話とか、下手な似顔絵描きが急にうまくなったわけとか、他の作家では今まで読んだことのない斬新さが本作にはあった。(12/31記)