ミネルヴァの報復
ミネルヴァの報復【電子書籍】[ 深木 章子 ] あたしゃあ,寝ぼけながら読んでいたのか,途中,あれこの話ミステリーではなく民事の話だったけか,なんて思いつつ,たしかに冒頭裁判所内で人が死んだシーンが出てきて,さらに裁判所通路内で人が射殺されて,やっぱりミステリーなんだろうなと思い直して何とか読了した。 この作家は昭和22年生まれだから現在76歳。 60で弁護士をやめてその後作家に転身したという変わっている方である。 したがって法廷であるとか司法の仕組みには詳しい。 それを武器にミステリーを書くのだからすごいリアルだ…。 と思いたくなるのだが,どうも話がもたもたしているうえ,登場人物が少数の割に複雑で,こと本作に関しては私は好きになれなかった。 最終盤弁護士が真実からずれた工作をしようとしている点も納得いかない。 それよりなによりミステリーのルールを軽んじているその態度が嫌だ。 何しろこちらは百戦錬磨のミステリーリーダーでっせ,もしや掟破りの,使用人犯行,を出すんじゃあるまいな,などと推測していたら,なんとそのとおり,つまり,全部みろっとめろっとお見通し状態になってしまったのだ。 探偵犯行やら使用人犯行はご法度でっせ。 探偵犯行は唯一黄色い部屋だけが認められた作品だ。 使用人犯行はタブーだ。 作家の側ではなんとかしてなりすましトリックを生かしたいだろう。 まして現代の科学捜査では顔をつぶすだのなんのなんてことはできんもんなあ。 そんなことしてもDNA鑑定で全部明らかになる時代なのだ。 その点本作における被害者なりすまし決して顔を見せない作戦は大成功だった。 本作における唯一のできたトリックだったかもね。(8/8記)