祈りのカルテ
祈りのカルテ【電子書籍】[ 知念 実希人 ] さて本作は, 愛する男の暴力から逃れるため、大量服薬をくり返し装っていた女性。 保険金によって家族を幸せにしようと、自らの体にメスを入れさせた老人。 幸せな未来を手に入れるために、下腿に湯をかけた母親。 愛しい父親と会うために、薬を捨てていた少女。 そして……。 目を閉じると瞼の裏に、世間を欺いてまで多くの人を救おうとした女性の微笑みが蘇る。などという短編からなる。 そもそも主人公は諏訪野という研修医である。 それにしても最後の作品はなんと偶然にも読んだその日の夜日テレで流されていましたな。 それはともかく本作を読むまで知念実希人と言う作家も知らなかったし,祈りのカルテがドラマ化されていたということも知らなかった。 したがって素のまま読み始めた。 そうしたらなんとこの研修医諏訪野が患者の裏にある物語を推理してしまう。 さらにその指導医が読み手の心のままにつまりしてくれる。 すなわち朝ドラ理論ですな。 しかし最後の作品は,循環器系の研修で,ヒロインは元アイドルにして女優,しかも諏訪野が好きだったと言う患者だったのだが,臓器移植というナイーブな話を見事にオブラートで包み込んで読み手に涙を流させるという仕掛けでしたな。 それで一気にこの作家のファンになってしまうのだ。 そこでもっとKindle Unlimitedに所収されていないかと探すと,ございません。 残念! そもそも研修医の世界などわからん分野だし,研修中に自分の適性を見極めその道に進まなければならない,医師の重要な場面なんでしたな。 諏訪野君は最後の循環器系の方に進むらしい。 医師の世界もさることながら,保険やら複雑な家庭関係やらも理解していなければならず,研修医にしては実に出来過ぎくん,こんな若い衆,いませんよ,どんな世界にも。 いたらどんな世界でも欲しい人材だ。 それだけ今の若い衆をプロ化するのは大変な作業なのだ。(11/6記)