黒い列車の悲劇
黒い列車の悲劇【電子書籍】[ 阿井渉介 ] いやあ毎度毎度凄いトリックを駆使して読み手を楽しませてくれるな。 ただ正直言ってリアルに欠ける。 パフォーマンスのいいクレーンを使えばどのようなマジックも可能になるか。 今回の大きなお題は、トンネルに入ってた列車が出てこない。 中を確認したら何も残っていないのはなぜか。 ということ。 阿井渉介の場合、必ずネタがあるわけだ。 決して解明できないトリックではない。 それからこの作者の特徴は、立派な動機があるということ。 つまり、物語性が高いということなのだ。 一言でいうと、私たちミステリーリーダーは、彼の作品に酔わされてしまうのだ。 ミステリー書きかくあるべし、そんなお手本的な作品を次から次へと飛ばしていたんだな、この阿井渉介という作家は。 それが今やっとkindleunlimitedで読む事が出来たということだ。 そういう意味で(どういう意味で?)、私たちは有名な作家に踊らされていたのではあるまいか。 例えば、清張、森村のトリックなしミステリーなんか、よくよく我慢して読んでいたものだなと、そんなことを思うのである。 さてその動機の部分、牛深という警視庁の刑事は、どうやら小樽の出身で、小学校時代、正義少年団というものの棟梁だったらしい。 その一部がアラフィフになって、牛深に対し挑戦状を送るわけだ。 主犯格のターゲットは、ただ一人。そのただ一人のターゲットは話の最初に見事に殺される。 というより、衰弱死してしまう。 そのあと列車のトリックが出てくるわけだ。 ミステリーとして本当に楽しませてもらった。(2/22記)