首相官邸占拠399分
首相官邸占拠399分【電子書籍】[ 姉小路祐 ] ミステリーリーダーとしていつもリアルについて書かせてもらっている。 本作ほどリアルに満ちた作品はない。 どこからこれだけの警察組織のリアルを引き出したものかわからない。 その引き出したと思われるリアルの歯車が一つの狂いもなく本作で披露される。 作者や世の中の人が思っているほど現場警察のキャリア、ノンキャリアの乖離はまずないと思ってよろしい。 特に田舎警察であればあるほど、いつか読んだこの種の小説に書いてあった、地元警察は、キャリア様をまつり上げて何事もなく東京に返せばいいのだ、という風に思っているのは、田舎警察の中でも警視クラスの人で、その他の人はキャリアのことなどなんとも思っていないだろう。 さてそれはともかく、本作は、いわゆる警備部の2つのセクションを中心に話は進む。 一つは公安。 一つは警備。 この二つは、田舎警察では一つのものなのだが、首都警察である警視庁では別物だ。 本作の中心は公安。 公安といっても、警視庁の名簿からも消されてしまっている、本作でいうところの、ウラ公安だ。 協力者工作で、男性警察官が女性を誑し込むことに成功したことから話は始まる。 運悪く本物の恋人に見られてしまったんだな、その協力者と一緒にいるとところを。 そのうえ、ラブホにしけこんでしまった。 ところが、本作ではこのウラ公安、さくら、という別名を持っていて、工作に失敗すると、簡単に首切りをするものらしい。 そしていつの間にか、依願退職の形をとらされてしまう。 中には命を失ったものもいる。 そういうもろもろの不満を抱えた警察官、元警察官らが集まって首相官邸を399分間占拠するという話。 実に素晴らしい文章力で、私は一気に読了してしまった。(2/22記)