チャップリンを撃て
チャップリンを撃て【電子書籍】[ 日下圭介 ] これまた傑作。 5.15事件にチャップリン来日を合わせたもの。 冒頭から実に丁寧に描かれている。 クーデター側、その情報を掴んだ捜査側、そして来日するチャップリン側。 それらがだんだんだんだん5.15に収斂していくわけだ。 恐るべき筆力。 読み手はぐんぐんぐんぐん話に引き込まれていく。 読み始めたらやめられない本というのは、こういうのを言うんだよね。 しかも、話が現代でない。 当時を想像しながら読み進める楽しみもある。 本作における首謀者が、飼い犬に噛まれるがごとく左肩と右足を撃たれ入院してしまうことで、事件から離れてしまうんだな。 けれども、法的には、共謀共同正犯として責任を問われるだろう。 何しろ首謀者だからね。 残念ながら本件は、犬養毅総理が暗殺されるという最悪の結果を招いた。 本作における計画では、帝都が電力関係の施設の破壊により、大停電を起こして真っ暗闇になるはずだった。 首謀者不在でそのへんが失敗したのは間違いない。 それから情報の一元化がなかったから、事件が起きてしまった。 早くから握っていた情報だけに、ときの総理の暗殺を許してしまったということは、悔やまれてならない。(4/7記)