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カテゴリ:青崎有吾
有栖川有栖と並ぶ平成のクイーン青崎有吾。 衝撃の処女作「体育館の殺人」で屈服させられてからというもののめり込んでいる。 「体育館の殺人」で探偵役を務めたアニメオタク裏染天馬を主人公とした一連のシリーズは、抜群の論理展開を武器に今のところ全作がオールタイムベスト級の傑作となっている。 そんなところも有栖川有栖と似ている。 この日常の謎を扱った短編集は、二作目「水族館の殺人」とシリーズ最新刊の三作目「図書館の殺人」の間に出版されたものだ。 長編三作の間を埋める造りとなっている。 アニメオタクの探偵役、レズビアンの妹、学生もの、軽い文体等の要素では誤魔化せないミステリ的企みの凄みが、今回も輝きを放っている。 「もう一色選べる丼」は校内に置き去りにされた学食の品を巡る物語。 何故二色丼のうちの一色であるカツだけがまんま残っているのか、何故箸が無いのか、何故ゴミ捨て場で食べていたのか、そんな謎が天馬によって鮮やかに解かれる。 「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」は有名な、若竹七海実際に体験した謎に対する挑戦。 これまでに法月綸太郎らが挑戦したテーマに氏も挑戦している。 真相は夏の暑さに頭をやられたような阿呆で可愛い悪さ。 「針宮理恵子のサードインパクト」は不良女と童顔少年の恋愛譚。 クズ野郎天馬が珍しく優しい。 日常の謎にしても真相は細やかなものだが、これは不良娘の恋心が白眉。 自分もつい最近まで喝上げ等の悪さをしていたから、他人の悪さを責められなかったり、濡れ衣を着せられても諦めてしまうところが良い。 「天使たちの残暑見舞い」は日常の密室消失もの。 教室で抱き合っていた女生徒二人が突如として消えてしまうというもの。 まさかの大トリックだった。 「その花瓶にご注意を」は妹ビアンが探偵役を務める一編。 音も無く割れていた花瓶の謎を解き明かす物語で、真相はこの作品集中で最も悪意に満ちたもの。 犯人も性格が悪く、妹ビアンが追い詰める場面は気持ち良かった。 「世界一居心地の悪いサウナ」はおまけの掌編。 絶縁中の天馬と父親が偶然サウナで二人きりになり、罵倒を繰り広げる。 ファン用の特典といった感じ。 ベストは論理展開の見事な「もう一色選べる丼」と「その花瓶にご注意を」で悩む。 若干の差でよりすっきりしている「もう一色選べる丼」か。 でも真相の衝撃度は「その花瓶にご注意を」が大きかった。 これはもうその日の気分次第だ。 他の作品も総じて出来が良く、平均点の高い外れの無い一冊と言えよう。 もっともそれはこの作品集に限った事ではなく、 この作者自体が外れの無い作家なのだ。 本当に天才だと思う。 新本格以降では一番の才能の持ち主だと信じている。 これからも抜群に楽しみだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017.08.13 07:38:34
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