「アンドロイドの『脳』」 人工知能ロボット”ルーシー”を誕生させるまでの簡単な20のステップ
スティーヴ・グランド 高橋則明・訳 瀬名秀明・解説 2005/2 アスペクト 原書2004
1958年生まれのイギリス在住のイギリス人。小学校教師からコンピュータ・ゲームの開発者に転じ、人気ソフトを製作。ゲーム業界に多大な貢献をしたとして政府から勲章を受ける。その後ゲーム会社を退社し、ロボットを製作している。また、イギリス国内では21世紀に活躍するであろう最も知的な研究者18人の1人にも選ばれている。裏表紙プロフィール
著者は、なかなかユニークなプロジェクトに取り組んでいる。そしてこの本もユニークだ。そしてその結果もまぁユニークというべき結果がでている。先日読んだ「知能の謎」の中心的著者である瀬名秀明が解説を書いている。
私は、この本を書き始める2年ほど前、自分だけで完全な人工生命を作るという、途方もなく楽観的なプロジェクトの礎石を置いた。その生命は、有名なヒト科の祖先の化石にあやかって、ルーシーと命名した。ルーシーはアンドロイド・ロボットだ。p012
彼の葛藤は、一読に値する。銀行口座の残高の減少との競争しながらの研究は、壮絶でもあり、滑稽でもある。ただ、作者が自らの人工知能への思いを、具体的な”ルーシー”という存在に賭けている姿勢には賛同する。もともと、他のプログラマや研究者たちも、みずからの人工知能AIをより進化させようとすると、どうしても身体をもつ「ロボット」が必要になる、ということである。
御茶ノ水博士は、交通事故で死んでしまった1人息子の変わりに「鉄腕アトム」を生み出した。子供がほしいおもちゃ屋のゼペットじいさんは、ある日、子どものかわりに木のあやつり人形「ピノキオ」をつくった。山田洋次監督は、日本の感動的な原風景を描くために「車寅次郎」を創り出した(こりゃ、ちょっとちがうかな)。いずれにせよ、著者が、アンドロイド”ルーシー”を作ろうとしていることは、理にかなっているように思う。
さてさて、このブログ、まだまだ正確にはコンセプトが浮上していないが、実はまだ生まれぬ14歳の少女「アガータ」(*)へのメッセージ、になる予定なのだ。ユングのアーキタイプのひとつでもある「髭を生やした老人と美少女」、そういうイメージがある。まだ生まれてもいない、わが愛する小アガータは、少なくとも私に14年の時間を与えてくれている。まだ白髪もすくないが、すでに50の齢を軽く通りすぎている私も、あと14年以上経つと、髭を生やした老人、という役割もわりとハマっているかも知れないではないか。
ある友人は、14歳の自分の娘とふたりで一緒に暮らしている。あるいは、私に中には、初恋の彼女がまだ14歳のままで住んでいる。いろいろな連想がある。で、最終的には、「ソフィーの世界」のようなものになったらいいかなぁ、という希望もあるが、なかなかそうはいくまい。ただ、そういうイメージの萌芽が少しはでてきたかな。この本を読んでいて、アンドロイド人工知能の話はそっちのけで、そんなことをイメージし続けていた。
注(*) アニータさん、ではない。為念。w