「宇宙『96%の謎』」 最新宇宙学が描く宇宙の真の姿
佐藤勝彦 2003/11 佐藤勝彦 実業の日本社
SNSのコミュで紹介があった一冊。いままで、ぶらりと行った図書館の新着コーナーの読みやすそうな新書本を中心として眺めてきたが、最近は、すこしテーマ別におっかけてみたり、作者をおっかけてみたりしている。だが、いよいよ、他の人々が読んでいる本と同じような本を読んで、その話し合いの輪のなかに入っていく機会がでてきそうである。
この本の著者は、ホーキング博士の宇宙論などを翻訳してしている、現代の宇宙物理学の第一人者ということである。いきなり宇宙論の中に飛び込んでも、とまどうばかりで、理解できることなど、ごくごくわずかな範囲でしかない。ただ、科学であるかぎり、まったくの突拍子もない話がでてくるわけではなく、どこかまでは理解できていて、それ以降は、それを基礎として理解を進める、ということを繰り返すしかない。
それにしても、46万年前の地球の歴史について想いを馳せるのも、この本に書かれている137億年前のビックバンに思いを馳せるのも、、通常の生活を送っている一般人である私には、まったく思考停止状態に陥ってしまう出来事である。
現在、自然界は4つの力によって支配されています。それは「重力」と「電磁気力」、ミクロの世界で大きな力を発揮する「強い力」と「弱い力」で、それぞれの力に対応して、相対性理論や電磁気学、量子力学などの理論があります。p112
この4つの力が4%を占めていて、のこる96%は、謎の物質とされる。そして、この本の最終章になると、その謎の物質が第5の元素の可能性が紹介される。
実際、「真空のエネルギー」が、宇宙開闢の時から穏やかに減衰し、今日の値になっているというモデルも提唱されています。最近、この減衰していく「真空のエネルギー」に、「クインテッセンス」(第5の元素)という、いくらか仰々しい名前がつけられています。古代ギリシャ哲学では、宇宙は、火、土、空気、水のほかに、惑星や月が天球の中心に落ちるこを防ぎ、つかの間だけ現れる物質があると考えられていました。その第5の元素、まさにこの「クインテッセンス」が「真空のエネルギー」ではないか、という主張なのです。p251
SNSコミュの書き込みでは、どうやら、この物質は、この本がでたあとに確認されたとのことである。クインテッセンス、あるいはクイントエッセンスというらしい。この第5の物質をもって、木、火、土、金、水、あるいは5重の塔の意味にも連なってくるというのだが、にわかには理解は難しい。
本書の遠大な理論的な宇宙観の展開の中にあって、カミオカンデの実験の話や、ゴーギャンの話がでてくることで、ようやく原寸大の人間としての位置を確認することができる。しかしまぁ、人類の叡智とはすごいものだと、嘆息しきりである。