「いま、釈迦のことば」
瀬戸内寂聴 2008/04 朝日新聞出版 単行本 197p
Vol.2 No.0115 ★★☆☆☆
1922年生まれの女流作家が、いまは袈裟を着て、お釈迦さまの弟子として、ご高齢をものともせずに、公私に活躍されていることはご同慶に堪えない。法句経と言ったって、ダンマパダと言ったって、なにほどの違いもない。釈迦といったって、ブッダと言ったって、なにほども違いもない。しかし、なんともセンスの違いを感じる。団塊の世代の上、70代から80年代の読者を狙っているのだろうか。
おなじ年配でありながら、今はほとんど視力を失って介護ベッドの上で暮らすわが母親を考えれば、寂聴尼の活躍は驚異というより仏のご加護があるから、という以外になさそうだ。しかしまた、それだけに、どことなく世代のギャップをありありと感じる。それは、著者ひとりに対するものというより、日本仏教界そのものに対する世代ギャップだ。
この小さくて綺麗な本のなかには、ダンマパダの言葉の数々がきらめいており、著者の説教もまた、母親の話のように心にしみてくる。しかし、それだからこそ、あまりに宗教的衣装を着た著者をクローズアップした写真の数々はどこかちぐはぐ。彼女はもう、釈迦の法句経を説く敬虔な尼僧というより、寂聴教団を率いるアイドル教祖、という趣さえ漂わせている。