|
テーマ:お勧めの本(7217)
カテゴリ:社会派小説
・変な小説だった。中盤まで淡々と全然盛り上がることなく1人称で語られる。語っているのはどうも天皇の奥さん、つまり皇后さんだとわかり盛り上がるかと思いきやイマイチ。皇后がインターネットを通じて時の政府関係者にメールを送って「反乱」を起こしていよいよかなと思いきやイマイチ盛り上がらず、ついには天皇自身が「詔勅」として意見を表明するという「反乱」を起こすのだが・・・
・島田雅彦といえば、現実をモチーフにしてリアルな政治的小説を書く、どちらかと言えば左翼的というか国民目線に立った作家だと認識している。この作品もそんな作品だが、主人公が天皇家の皇后である点が画期的な発想、憲法を順守しようとする平和主義者の皇室と「マフィア」と表現される時の政府や官僚たちの構図ってリアルなのかな?と考えてしまった。確かに天皇家の人たちって人はよさそうだけど、そんなに聡明なのか? 俯瞰的に歴史や世界を見えているのか?小説なのにリアルな現実社会と比較してしまう。
〇ミセス・ネバーとミス・OK ●盗聴器まで仕掛けて監視している女官がミセス・ネバー、次女のジャスミンはミス・OK、彼女の手ほどきで「ダークネット」という場に怒りに満ちた本音を暴露するようになった皇后のハンドルネームが「スノードロップ」 〇不愉快な内奏 ・抑止力に関する総理と天皇の対話が妙にリアル(総理は安部さんをモデルにしている感じ) ―その平和は抑止力によってですね、辛うじて保たれているので、日米同盟に依存しなければ、他国の侵略を受けてしまう恐れがあるわけであります。第3国と戦争になった場合は、同盟相手に味方するのは当然の義務でして、日本を守るためには他国との戦争にも参戦しなければならないということを肝に銘じていただきたいものです。(総理大臣) ―そんな戦争によって平和を維持するようなことは肝に銘じられません(皇后さん) ●総理の発言はまったくリアル、本当に皇后さんがこんな発言をしてくれたらいいな、面白いだろうなと思った。 ・様々な人に語らせる歴史認識はおそらく著者の歴史認識なのだろうと思う 〇アメリカは国体のような曖昧なものにも、三種の神器のような物品にも興味はなかった。ただ、この国を永遠に自分たちの管理下におき、占領を続けられれば、それでよかった 〇「日露戦争によって、日本はその後の未来を買収されてしまった」という歴史認識・・ ●これについては今まで知らなかったので調べてみる必要がありそうだと思った 〇今この国を牛耳っているのは、ホワイトハウスやCIAや「日本の心を守る会」や官邸の後ろ盾を得ている以外に何も取柄にない人々です。 ・天皇がついに反乱を起こして書いた「詔勅」より 〇私は厳格に憲法を順守しているが、あなたたちは公然と憲法を憎み、軽視していることは明らかである。憲法を踏みにじる者に憲法改正の発議をする権利はなく、速やかに政権から退場し、最高法規を犯した罪を裁かれるべきである。あなた方は司法を自らの支配下に置いているつもりであるが、それも三権分立の原則に反する。 〇嘘をつくな、史実を語れ ●まさに著者が言いたいことを天皇に語らせたんだと思うが、実際に天皇さんがこんなことを考えていたとしたら世の中捨てたもんじゃないなと思えるな。 ・あまり興奮したり盛り上がったりはしなかったけど、面白い作品だったと思う。かなり政治的にリアルな内容なので評価は分かれるのだろうなと思うが、あえて書いた作家島田さんの決意も感じたのだった。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.11.03 19:45:53
コメント(0) | コメントを書く
[社会派小説] カテゴリの最新記事
|