昭和国民文学全集(6)(著者:林不忘|出版社:筑摩書房)
「丹下左膳」の「こけ猿の巻」と「日光の巻」。
初めて読んだが、驚いたことに、おちゃらけ小説なのだ。
講談の語り口そのままの文体で、次から次に事件が起こり、全体としては結局謎は謎のまま終わってしまう。
特にこの人が主人公、というわけではなく、次々に登場する人物がそれぞれ重要な役割を持っている。
また、丹下左善は正義のヒーローなどではなく、とにかく人を切りたい、という破滅的な人間で、それでいながら、子供を匿い、好敵手を気遣い、恋もする。
作者は若いときにアメリカで生活したことがあり、向こうで身につけた感性を時代小説に持ち込んだものらしい。
もっと読みたいとは思わないが、とにかく驚いた。